新型コロナウイルス感染症で自宅療養中の20代男性が亡くなったことを受けて、京都市に対し京都府保険医協会と公衆衛生行政の充実を求める京都市実行委員会は連名で6月10日、「すべての新型コロナウイルス感染症陽性患者へ必要充分な医療保障を求める要請書」を手渡して懇談を行った。京都市からは医療衛生企画課の中濵正晃課長、寺石悠馬係長、実行委員会側からは渡邉賢治実行委員長(協会副理事長)ら6人が出席した。
要請では、感染症法はこれほどの規模でのパンデミックを想定しておらず、病床逼迫で自宅療養者があふれ、健康観察を担う保健所は職員の生命をも脅かすほどの時間外労働を強いられている状況だ。そうした中、健康観察となった時点で患者が主治医を失う事態となっており、これを解決しなければ今後も同様の事例が起こりうるとして必要充分な医療保障を求めた。特に京都市は保健所の集約化が困難の背景にあると指摘。健康観察は市内1カ所で行わず、11区役所3支所に職員を再配置して行い、地区医師会と協力して陽性患者一人ひとりに主治医と保健師を決めて対応することなどを求めた。
これに対して京都市は、全市的危機管理事案に機動的かつ効果的に対応できるよう保健所機能集約化を実施。これによりコロナ対応においてもコントロールセンターとしての機能を発揮し、区をまたぐ対応や濃厚接触者の追跡にも効果を発揮している。
集約化により医師対策チームを組織し機動的で迅速な対応ができ、保健師による電話での日々の聞き取りにより切れ目ない健康観察ができている。区にこれを移すとなると、情報の精度差やタイムラグなどが考えられることから、1カ所集約でやるのが安全かつ効率的、と従来からの主張を繰り返した。
実行委員会側からは、「広域的対応も必要だが、個別的に生命を守る健康観察については毎日600人というような膨大な対応を1カ所で行うよりも、主治医との関係を保つ上でも行政区単位で行う方が良いのではないか。
経験のない保健師に対応させるということではなく、この1年間経験を積んだ専門職が各区役所に散って、各区の兼職保健師とともに健康観察を行うことを提案している」「コロナ対応が集約化して大変なことになっているという現場の保健師の声もある。他都市は行政区単位でうまくいっているところもある。区役所単位で行うことに克服できないデメリットがあるのか疑問だ」「保健師機能が弱くなっているのは、本来各区で対応すべきものが集約化により対応できなくなったことに問題があるのではないか」「コロナ対応でも京都府医師会と地区医師会があるからうまく機能している。地区医師会をなくして京都府医師会だけで対応するというのは考え難い。現状を基準に考えるのではなく、感染した方の生命を守ることを優先して考えてほしい」等と訴えた。
京都市は、要望を参考に市民の健康を守れるよう考えていきたいと締めくくった。
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