協会は、経営セミナー「閉院・承継―いつか来るその日に備えて―」を4月22日に開催した。このセミナーは昨年9月に協会が発刊した「しおり」を基に、講師のひろせ税理士法人の副所長・認定登録医業経営コンサルタントの常田幸男氏が、事務手続きを中心に解説した。参加者は11人。
厚労省の2018年医師統計によれば、診療所に従事する医師数は約10万人、平均年齢は60歳。開業ブームであった1998~2008年に開業した医師がそろそろ閉院・承継を考え始める時期になってきたのではないだろうか。閉院あるいは承継を①閉院②死亡閉院③承継(親族あるいは第三者)④死亡承継の4パターンに分け、「保険診療関係」「社会保険・労働保険関係」「税務関係」の行政手続きについて、書類の取得方法や提出先・期限・添付書類など注意点を踏まえ具体的に説明した。
特に「社会保険・労働保険関係」では、雇用主と労働者両方の手続きがあり、信頼のおける税理士や社会保険労務士に相談・依頼することをお勧めした。
また、死亡時の連絡・届出、相続の流れについても、この「しおり」をチェックリストとして活用することでスムーズに漏れなく事を運べ、金融機関などへの連絡時に、残された家族へのちょっとしたアドバイスも行った。
診療所、備品などの保存や処分にも触れ、閉院時には、テナントの現状回復義務、医療機器等のリース残金、院内物品の廃棄処分、従業員の退職金等に費用がかかるため、事前の見積りが重要だと説明。特に第三者承継の場合には、不動産や動産、患者引継ぎ、従業員の継続雇用等で問題が発生しないように、専門家とも相談のうえ、慎重に進めることを強調した。協会では各専門家との無料相談室があるので利用いただきたい。
その他、死亡・閉院後であっても医療行為に起因する事故が発見された場合、患者には診療契約の債務不履行に基づく賠償請求権があるので、安価な掛金で利用できる協会の医師賠償責任保険の延長特約の利用を勧めた。また、閉院の告知は従業員、患者、関係医療機関、業者などに及ぶが、きちんとルール化して遅滞なく運べるように注意してほしいと伝えた。
参加者からは、「閉院の時期に有利不利があるのか」「閉院後、患者から訴えられた事例があるのか」「煩雑な書類作成を遺族ができない時は、協会が代行できないか」などの質問も寄せられた。
最後に、閉院・承継を考える際は、引退する数年前から計画的に準備をしてほしいと述べた。
なお、「閉院・承継のしおり」はすでに全会員に配布しているが、必要な方は1冊500円(送料・税込)で販売しているので、事務局までお申し出いただきたい。