主張 「町医者」であり続けられる 日本の医療制度を守ろう  PDF

 「かかりつけ医の推進」「かかりつけ医登録制導入」。過去に挙がったこれらの言葉は、患者にしてみれば大変よいことのように受け取られるだろう。「かかりつけ医」の定義は、何でも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な医師とされている。
 しかし、当初「かかりつけ医」機能として導入された新しい専門医のカテゴリである総合診療専門医は、思った以上に資格を取得する医師が少なく、当初の想定通りとは言えない状況である。そしてまた、2019年に国による検討が報道された「かかりつけ医登録制」は、医療費抑制のために、患者が任意でかかりつけ医を登録し、診療料を月単位の定額にして医療の提供を抑えたり、かかりつけ医以外を受診する場合は負担を上乗せして大病院や複数医療機関の受診を減らすという案だった。
 これまで開業医が中心となり、ずっと守ってきたフリーアクセス、出来高払いという国民皆保険制度の根幹の崩壊につながっていくのではないか。当時の協会の代議員アンケートでも74%が反対の声を挙げる結果となった。開業医の良心に触れることができ、大変心強い思いである。しかし、こうした案自体がなくなったわけではない。医療費抑制策は今も進められているのである。会員の声が協会の力となることをあらためてここで申し上げたい。
 医療者と言えども一人の人間で、未知の大きな力の前では萎縮しがちだ。個人的なことだが、年齢的に「閉院」「リタイヤ」の言葉が頭の中でちらほらすることもあり、いろいろな不安で押しつぶされそうになる。そういった時、サポートするのが保険医協会である。例えば、相続の問題、地域医療への配慮、法律問題、個別指導での対応、大変大きな力でのしかかる監査など。協会は、医師の一生の全過程にわたって、大きな頼りになる力でありたいと考えている。
 ずっと「町医者」をやってきた。「町医者」、いい響きである。願わくばこのまま将来にわたって「町医者」であり続けられる日本の医療制度、社会保障であってほしい。そのためにも、協会の活動にこれからも取り組んでいきたい。

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