新型コロナウイルスワクチンの高齢者優先接種において、京都市は4月26日から個別接種の予約を開始と広報。接種希望者は市のポータルサイトやコールセンターで予防接種実施医療機関を確認し、直接予約の連絡をすることとなる。医療機関へは早ければ5月10日からワクチンが配送される。一方で、各区・支所の公共施設などを会場とする集団接種は、5月下旬からのスタートとなる。
こうした状況のもと、協会は医療機関に予約の電話等が殺到することで、通常業務に支障をきたすことや、接種券送付対象者が限られる中、急なキャンセルなどに対応しきれずワクチンを廃棄することになりかねないことを懸念。少なくともワクチンの供給量が安定するまでは個別接種を中心とせず、集団接種に軸足を置くよう、4月22日に京都市に申し入れた。この要請は4月23日付の京都新聞で報道された。
府が実施主体となる医療従事者への優先接種においても、もともと集団接種は設定されず個別接種のみで体制を組む予定であった。しかし、少ないワクチンの供給量への対応やスムーズな接種のため、各地区医師会が中心となり、集団接種会場の設置、地区内の病院での集団接種、近隣各医療機関のグループ化での集団接種など、体制構築に懸命な努力がなされている。約10万人対象の医療従事者への接種でもこれほどの混乱が起こっていることから、ワクチンの供給が少ない中では約23万人が対象となる高齢者優先接種に、個別接種を中心に置く体制構築では無理があると言わざるを得ない。先述の4月23日付の京都新聞でも、大人数の接種を担う他の政令指定都市の状況が紹介され、北九州市は現時点で個別接種は行わない考え、神戸市は集団接種を先行して開始すると報道されている。実際、予約が開始された京都市の26日の混乱ぶりが各紙で報道されており、医療機関からは「周知等が間に合わず試行錯誤で進めていくしかない」などの戸惑いの声が掲載された。協会にも同様の声が寄せられており、「ワクチンに関する電話が鳴りやまず、他の電話が取れない」「電話で日常診療に支障をきたす」「対応できる人数に限度がある」など。
そもそも国策として予防接種を進めている以上、案内から予約、接種、経過観察と、万が一の場合の救急対応までを自治体主導のもと実施されることこそが公的責任に基づく本来の姿である。もちろん地域の医療者は接種希望者に対し、その使命感から接種実施に向け態勢を整えるべく努力する。しかし、その善意を自治体の施策の柱とするのは、自治体の責務放棄ではないか。
協会はこの間、新型コロナワクチン予防接種体制について、国や実施主体となる自治体に要請等を重ねているが、今後も引き続き会員の声を届けていきたい。
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