医療法・健保法改定案の見直しを 厚労省に要請書を提出  PDF

 「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案」が4月8日に衆院本会議で与党などの賛成多数で可決され、参院に送られた。協会は4月14日付で、この法案を廃案にし、根本的に見直すよう要請。また、同じく審議中である「全世代型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」についても、同日付で修正を求めた。両要請書は菅義偉内閣総理大臣、田村憲久厚生労働大臣、衆参の厚生労働委員、京都選出の国会議員へ送付した。

コロナで明らかとなった問題の解決こそ

 医療法改定案については、最前線で新型コロナウイルス感染症に立ち向かう医療従事者らの労苦に応えるわけでなく、コロナ禍により明らかとなった医療政策の問題点を修正するわけでもない。それどころか、従来の医療費抑制策を推し進めるものとなっていることから、協会は医療法改定案を廃案とし根本的に見直すことを求めた。
 医師の働き方改革については、人員増による労働時間削減という観点が意識的に欠落させられており、これこそが法案の持つ根本問題と批判。そればかりか医療費適正化のための医療提供体制改革(医療施設の最適配置の推進=地域医療構想・外来機能の明確化、地域間・診療所間の医師偏在の是正、適切な受診の促進=患者の受療行動の変化)を進める道具にしようとする姿勢は極めて問題とした。
 また、現行の5疾病5事業に「新興感染症等の感染拡大時における医療提供体制の確保に関する事項」の位置付けを提案しているが、国は現在の病床逼迫の理由を提供体制の柔軟性のなさのみに求めていることから、位置づけるだけでは解決せず、感染症病床の配置基準と一般病床の指定基準を見直し、それに即した病床と医療従事者数の確保方針こそが必要とした。
 さらに、国は新型コロナウイルス感染症による医療需要を「イレギュラー」なものと軽視し、医療需要推計や必要病床数推計の見直しすら行おうとせず、地域医療構想を引き続き推進し、公立・公的病院の再編・統合方針も進めようとしている。それに沿った廃止・統合を行う病院に対し地域医療介護総合確保基金からの財政支援を行うことも看過できず、基金は新型コロナウイルスの感染対策にこそ投入すべきとした。
 そして、自由開業制とフリーアクセスという国民皆保険体制の根幹に手をつけるものと言える「外来機能報告」の導入提案や、「医療資源を重点的に活用する外来」(仮称)を基幹的に地域で担う医療機関を定額負担の対象に位置付けること、新たな患者負担額相当分を診療報酬の初・再診料から「控除」するという計画にも反対を表明した。

高齢者の窓口負担見直し等の削除求める

 健保法改定案については、コロナ禍の中でこそ求められる医療保障の観点から看過し難い内容が含まれているとして、①後期高齢者医療における窓口負担割合の見直し②国民健康保険制度の取組強化における法定外繰入等の解消や保険料水準の統一に向けた議論の都道府県国保運営方針への記載③効果的な予防・健康づくりに向けた保健事業等における健診情報等の活用④医療扶助におけるオンライン資格確認―の4項目について削除を求めた。
 「子どもにかかる国民健康保険料等の均等割額の減額措置の導入」については、一定評価をしつつ、減額ではなく全額免除とすることを求めた。
 さらに、国民健康保険については、都道府県単位の医療費管理に利用する政策を転換し、応能負担原則が貫かれ、かつ、すべての人が必要な医療を必要なだけ受けられるよう全国統一の制度の実現を目指すことを要求している。

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