協会は4月1日、京都市持続可能な行財政審議会が京都市に答申を提出したことについて副理事長談話「京都市の福祉施策見直しは再考を」を発表した。
京都市持続可能な行財政審議会(会長=小西砂千夫・関西学院大教授)は、京都市の財政運営が危機的な状況にあり、「このままでは公債償還基金が枯渇し、財政再生団体となるおそれがある」として歳入・歳出両面の改革を京都市に促す答申を3月23日に提出した。これを受け、市は行財政改革計画を策定するという。
答申は、財源不足の補てんのために行ってきた公債償還基金の計画外の取り崩しなど将来世代への負担の先送りという「禁じ手」への依存を解消し財政構造を改善していく必要を説き、社会福祉施策の見直しや人件費総額の縮減などを盛り込んだ。歳入面では、地方交付税の必要額確保を国に要望することや税収増加につなげるまちづくりも盛り込むが、実現具体性からいうと、歳出面での削減改革が前面にでざるを得ない。
社会福祉施策で今回狙い撃ちされたのは、①敬老乗車証制度②国民健康保険事業への独自の財政支援(低所得者の保険料軽減のための一般会計からの繰入)③学童う歯対策(小学生のむし歯治療無料制度)④被災者住宅再建支援制度である。
学童う歯対策事業の議論をみても、「衛生環境が改善」したから役割を終えたとして他都市の水準に抑えるべきだと言うばかりで、なぜ京都市で先進的に取り組まれて、廃止した場合にどれだけの影響があるかの評価が十分でない。子ども医療京都ネットが実施した市民アンケートでは、「経済的に厳しい家庭ほど歯磨きやむし歯まで、お金も時間もかけられない実感がある。小学生ではなかなか意識がけも難しく、むし歯治療が無料でないと口腔崩壊の児童も増えると思う」といった声が多数上がっており、94%が「廃止しないでほしい」と答えている。財政的観点からのみ制度を止めてしまえば、こうした声を拾い上げることさえできなくなることを懸念する。
過去に、私たちが強く反対したにもかかわらず京都市が縮小させたサービスについて、「保健所再編統合」はコロナ禍によってその適否の議論が再燃した稀有な例であるが、京都市身体障害者リハビリテーションセンター附属病院廃止はその後の患者の動きなど検証さえされることもないのではないか。結果、市民生活が切り捨てられ、暮らしや健康の困難が埋没してしまうことになる。一つひとつの制度について不断の見直しを図ることは否定しないが、過去の検証もしつつ複眼的に考察しないと方針を見誤ることになる。
そうした市民サービスの後退に危惧を抱き、今回多くの市民団体が声をあげた。その結果、答申の最終段階で「市民生活がどう変わるかという視点も重要」「子どもの貧困や高齢者の生活困窮…には徹底的に寄り添う必要」「コロナ禍が収束するまでの間、社会的弱者に対する施策の見直しはセーフティネットとしての機能に十分配慮」などが審議会の意見として一定の配慮が追記された。
求められるのは、どのような京都市を目指すかの全体構想である。これまであまりに大型プロジェクトや観光に傾注し過ぎてこなかったか。コロナ禍で改めて突きつけられている。市民にとって住みやすい魅力あるまちにするにはどうしたらいいか、それが税収の安定にもつながる道でもある。
例えば、「子育て環境日本一」を京都市は謳うが、子ども医療費支給制度の現況はどうか。「他都市と比べて高い水準の市民サービスを維持してきたが、そのことが必ずしも子育て世代が京都に住むということにつながっていない」との審議会意見も紹介されているが、当然である。外来3歳以上月1500円負担というのは、府内で最低レベルであり、他都市と比べても相当に見劣りするレベルだ。少なくとも就学前まで200円負担を拡大しないと、小学生のう歯制度につなげるまでに空白期間(この間に口腔崩壊となっては元も子もない)が生じ、とても一貫した制度設計とはいえない。京都市には切捨て一辺倒でなく、市民目線で一層の知恵を絞っていただくよう求めたい。