新型コロナウイルスワクチン接種事業の準備が急激な速さで進められている。2月半ばから医療者への先行接種が開始されており、厚労省のワクチン分科会副反応検討部会によると、2月25日時点の接種実績は2万1000回超と報告されている。3月半ば以降には医療従事者の優先接種、4月以降から高齢者の優先接種と、息つく間もないスケジュールが示されている。その一方で、ワクチンそのものの供給スケジュールは明確に示されておらず、現場の混乱を招いている状況だ。
新型コロナウイルス感染症の収束に向け、ワクチンは大切な一要素となることは確かであろう。しかし、現在の接種体制構築はあまりに性急だ。
ワクチン接種を受けるのは、一人ひとりの市民である。果たして市民の誰が、今回の新型コロナウイルスワクチンの安全性・確実性について、正しい情報を得ることができているのか。ワクチン接種を行うのは、地域の医療者だが、これまで接種したことのないワクチンを市民に接種する際、頼れるのは自らの専門性に基づく安全性・確実性についての知見しかない。情報を収集し検討して、判断する時間すらない状況である。
また、京都府では当初より練馬区モデルを念頭に、各医療機関での個別接種中心で話が進められている。しかし、ワクチンの供給がどうなるのか定まらない中、患者から接種を期待され、個々の医療機関で接種時間を調整し予約を受け付けるということが本当に可能なのか。集団接種会場であれば、ワクチンの供給から予約管理など行政が責任を持ち差配することが可能なはずだ。副反応が発生した場合に備えて、対応する医師を確保することにもなる。こうした課題をクリアしたうえでなければ、個別接種として医師が安心・安全にワクチンの接種をすることはできない。
こうした状況を受け、協会は京都府に「新型コロナウイルス感染症への予防接種体制に関する要請」を2月26日に提出。以下、7項目を要請した。
①ワクチン接種において大事なのは早さではなく、市民が安全かつ確実に接種できる体制である。国から自治体への情報提供、人的財政的サポートの充実を行うよう要請を②ワクチンの有効性と安全性のわかりやすい情報提供を。特に情報が入手しにくく、ワクチンにアクセスしにくいと思われる方々への正確な情報提供を配慮いただきたい。外国籍の方については、多言語対応が必要③副反応対応マニュアルが明示されることになっているが、医療機関に求められる体制整備、救急体制と個別接種を行う医療機関の連携イメージを明確に④副反応を恐れて集合契約をためらう施設は多い。他院等の医療従事者を受け入れる医療機関、地区医師会主導などで行うワクチン接種のための医療機関のグループ形成に、補助および支援体制の構築を⑤住民接種における訪問接種体制の具体的な構築を⑥住民接種において、「個別接種」が中心に据えられているが、三密回避や待機時間などを考慮すると通常診療と同時の接種は困難である。診療時間外や休日等に接種する場合、医師への負担はもちろんスタッフの確保が課題となる。住民接種における集団接種を強化するとともに、財政補助も含め、国・自治体からの支援を⑦安全性・有効性の正確な情報を入手したうえでワクチン接種を望んでも、個々人の状態によって接種に踏み切れない人々も存在する。ワクチンの接種者と非接種者にいわれなき差別的取扱いが生じないよう十分な配慮が必要である。特に、「接種証明」のようなもので、社会的・福祉的サービスなどが受けられないなどといったことにならないよう対応を――。
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