新型コロナウイルス感染症の流行が第3波を迎え、日々対応する医療現場の疲弊は増していくばかりだ。季節性インフルエンザとの同時流行に備えた医療体制は、「かかりつけ医」を診療・検査医療機関に指定することで強化が目指された。しかし、地域内での検査・診療体制の情報共有さえ地区医師会任せとなっている現状で、自治体の主体的な方針は見えない。一方でいくつかの地区医師会が自主的に、病院、行政と協力し発熱外来を設置する取組みを進めるなど、医療現場の献身で現在の体制は支えられている。また、新型コロナ感染の不安からくる患者の受診控えで疾患の重篤化が懸念されるなど、日常診療への影響も甚大だ。
コロナ禍は社会の在り方を一変させ、新自由主義改革で弱体化した医療体制の深刻な状況を露わにした。国はコロナ禍以前において感染症病床の整備を怠ったばかりでなく、非常時に役割を担うべき公立・公的病院の再編・統合さえ強く迫ってきた。94年の改定保健所法(地域保健法)成立後に保健所数、人員ともに大きく減らされ、感染症対策において困難を抱えている。医師数・看護師数においても、このコロナ禍で人員の絶対数不足が明らかとなった。
これを立て直すには、これまでの政策の検証と根本的な政策の転換が必要とされるはずだ。しかし、医師偏在指標や新専門医制度など、この間国が構築してきた医師数抑制・管理策などはそのままに、むしろ外来機能分化の推進表明など「かかりつけ医」構想を明確化している。その一環となる大病院受診時定額負担の拡大方針を掲げ、紹介状なし患者の大病院受診の際の初・再診料を保険給付から除外。その分の補填を患者から直接徴収するという手法を例示として挙げた。これは国民皆保険制度の根幹である「療養の給付」の縮小であり、断じて許されるものではない。また、後期高齢者医療制度の窓口負担2割化について22年度実施を目指す議論まで進められており、患者の受療権を阻害する負担増には断固反対である。
今こそあらゆる医療費抑制政策を見直し、拡充強化の方向へ転換する時である。世界に誇る日本の皆保険制度を強化し、パンデミックにも対応できる医療体制構築に向けて、以下を決議する。
一、コロナ禍にあっても患者の受療権を保障し、かつ外来医療体制の整備と医療機関の支援のために、公的発熱外来を広く設置すること
一、全ての保険医療機関に対し、新型コロナウイルス感染症拡大によって生じた減収分を全額補填すること
一、新型コロナ禍の中、あらためてその有効性が認識された国民皆保険制度を堅持、発展させ、従来の病床数・医師数抑制政策を転換し、新興感染症にも対応できる医療体制を構築すること
一、国民皆保険制度の根幹である「療養の給付」の縮小は決して行わないこと
一、初診・再診料、入院料などの基本診療料の引き上げをはじめ安心・安全な医療を提供できるような診療報酬体系とし、医療費抑制策を抜本的に見直すこと
一、原発依存から脱し再生可能エネルギーの導入を促進すること
一、非人道的な核兵器の保有・使用を全面的に禁じる核兵器禁止条約に署名・批准すること
一、平和的生存権を否定する改憲を止めること
2021年1月28日
京都府保険医協会
第200回定時代議員会
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