新型コロナ編 地域医療をき!相楽・福知山医師会編  PDF

発熱外来と検査センターで広域な地区をカバー
山口泰司・相楽医師会長にきく

 ――発熱外来設置のきっかけは
 9月4日に出された新型コロナとインフルエンザの同時流行に備えて出された厚生労働省からの通知で、相楽地区でも発熱外来が必要だと議論を開始した。それまでは保健所や基幹病院が中心に検査、治療を行っていた。しかし、第1波、第2波と感染の波が続く中で、全国的に保健所は手一杯になっていたし、受入病院においてもクラスターが発生するとその後しばらく病院の外来機能がストップしてしまう。病院が多い地域ならまだしも、少ない地域でそういった事態に陥ってしまうと、助かる命が助からなくなるとの懸念が大きくなった。
 ――設置の経緯について
 そういった中、地区医師会としてできることはないかと、当地区でコロナ患者を引き受けて下さっている基幹病院の院長と、病院前スペースに時間を区切って発熱外来を設置し医師会会員が輪番で出務する形なら協力できるのではないかと相談した。私が皮切りになって医師会会員が何度か出務したが、駅前だったこともあって、どうしても地域住民の目に触れてしまう。感染への不安から住民の反対にあってしまい、検査する場所は地域住民がアクセスできるが、住宅地からは少し離れたところでないといけないことを認識せざるを得なかった。
 前後して京都市では府のPCR検査センターが開始。その後宇治市にも設置されたが、当地区からはなかなか遠く、患者さんに行ってもらうのは現実的ではなかった。山城南圏域の中で地区医師会が中心となり何とかしなければという思いが強くなっていった。
 保健所長とも密に連絡をとり、地域での発熱患者の受け皿が必要との認識は一致していた。
 ――どういった構想だったのでしょうか
 発熱外来を作り、まずは週1回から時間を区切り地区医師会員が出務するという構想で、9月頃から保健所をはじめとした各方面と相談を重ねた。また、地区の発熱外来と並行して府の検査センターを相楽でも設置してもらうことを念頭に府医師会等に依頼を重ねていった。
 発熱外来は、何より設置場所選定が難航した。保健所長にもいろいろ動いていただく中、なんとか設置場所が決定。同時進行で地区会員にアンケートを行い、出務してもらえるかどうかを聞いた。補償の問題など細かく決まっていない中で、出務をお願いするのは心苦しかったが、そうした状況でも最初に20数人が手を挙げてくれた。後期高齢者の年齢を過ぎた会員からも協力すると言っていただき、大変心強かった。
 保健所長と相談しリスクを配慮して、まずは若い会員で出務を行い、それでも手が足りないとなったら手を挙げてもらった高齢の会員にも出務をお願いすることにした。
 一方で、府のPCR検査センターも相楽地区に設置することが決定。相楽地区は東西に長く、端から端まではどうしても時間がかかる。地区医師会が立ち上げた発熱外来が東の木津川市、府のPCR検査センターが西の精華町に設置となり、広い範囲でカバーできる体制となった。発熱外来には当初、基幹病院の感染対策チームの看護師などに応援にきてもらい、出務する開業医、看護師に慣れてもらうよう配慮した。
 また、11月にはPPEの着脱の仕方について同チームの医師や看護師を講師に招いて講習会を開き、実技講習を行った。直接会場に来場できなくても参加できるよう同時オンライン開催にしたが、講習内容を録画しネット上にアップしていつでも閲覧できるようにもした。
 こうした中、12月初旬に地区の発熱外来とPCR検査センターが始動。発熱外来は木曜日の2時から3時30分の1時間30分、PCR検査センターは火曜日の同時刻に開所している。
 発熱外来は紹介例のみを受け付けており、インフルエンザも同時検査できるように抗原検査を実施している。結果がすぐ出るので、患者さんには車内で待機してもらい、結果を渡すようにした。もちろん、コロナ陽性であれば保健所対応になるが、もしインフルエンザのみ陽性ならば、結果表を渡しその日の夕方に紹介医に戻している。
 ――ワクチンの優先接種が始まりますが
 地域の発熱外来、検査センターがうまく回りだして少しほっとしているが、今度はワクチンの問題が出てきている。医療従事者へのワクチン優先接種は集団接種も想定されているが、これまでのコロナ対応で手いっぱいになっている状況。このうえ、集団接種となると人員不足と会場の問題などで頭が痛い。どういった対応がとれるのか、今後地区医師会として周囲の地区医師会とも協議しつつ考えていきたい。

北部PCR検査センターの活用で地域医療の崩壊阻止へ
井土 昇・福知山医師会長にきく

 ――地区における新型コロナへの対応について
 当地区でも、20年3月に市民病院でクラスターが発生したことは記憶されていることと思う。このクラスター発生を受けて、市立福知山市民病院院長、京都ルネス病院院長、中丹西保健所所長、福知山市福祉部長、福知山医師会会長が緊急に会合し、今後の対応につき協議した。
 そこで一手に救急を引き受けることとなる京都ルネス病院は一般の救急はともかく、小児科は医師1人で奮闘する状況となるため、連日にわたる小児の夜間救急は手に余る状態であることが判明した。このことを受けて、地区医師会は、地域の小児科の救急医療が維持できなくなると、急遽小児科開業医に協力を要請した。結果、5人の医師に協力いただくことができ、先生方は自院の通常外来を終えたのち、午前0時まで出務いただくことになった。後に京都市内の病院勤務の医師も1人駆けつけて下さり、6人での分担となった。また、この小児救急での対応においては、両丹日日新聞、読売新聞、京都新聞で広報し、市民に対して各小児科医院の診療時間内の受診や小児救急相談の活用をお願いするなど、可能な範囲での協力を訴えた。
 依頼日の翌日から出務していただくという無理なお願いを引き受けて下さった医師の方々に心より感謝申し上げる。コロナに端を発しての地域医療崩壊の危機を目の当たりにした事例だ。
 この会合はその後も重ね、救急体制の協力方針や維持について、今後の感染者の増加から感染爆発における対応についても検討協議を行っている。
 また、福知山市が市営施設の運営を再開しようとした際には、福知山医師会として市民へのメッセージが大事だと考え、市長に提言。福知山のような小規模都市であっても観光客の流入は感染者の発生・増加、ひいては感染爆発につながる危険があること。医療キャパシティーは重症者5人程度であり、感染拡大は医療崩壊を招くこと。圏外移送という方法もあるが、いつ何時その移動手段が取れなくなる事態が来るかわからない状態だと、医療者としての危機感を訴え、当面の間、市営施設を閉所するよう提言した。日常からの行政との信頼関係を前提に、専門家から発した提言だ。
 ――北部PCR検査センターの出務状況について
 福知山でも20年11月には10例、12月も連日コロナ陽性者の報告が届いているような状況の中、インフルエンザ同時流行に備え、府や府医師会の主導のもと、福知山市も協力して12月22日に京都北部PCR検査センターが稼働を開始した。9月から北部での検査センター開所の話があり、福知山医師会としては10月の段階で出務できる医師を募り、22人の協力を得ていた。11月には保健所長を講師にPCR検査実技講習会を開催。しかしながら、開設場所や看護師などのスタッフの確保などで難航。行政による看護師の確保は難しいということで、私の頭に浮かんだ人を説得して確保に努めた。事務方は行政に確保してもらった。
 PCR検査センターが設置されているのは福知山市の所有地。1月から週に2回、火曜日と金曜日で開所している。出務している医師は初めのうちは2人でその後1人。検査センターに来られる人は多くなく、多くても4人までで推移しているようだ。
 京都市とはだいぶ様相が異なると思うが、大きなクラスターが発生してしまうとたちまち医療崩壊の危機を迎えてしまうので、細心の注意を払い、PCR検査センターなどを活用していくことが必要だと考えている。

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