今回の推薦本は、『地球に住めなくなる日「気候崩壊」の避けられない真実』である。このテーマは、京都議定書やパリでの国際気候変動パネルIPCC2007年2月報告の話題のみならず、すでに米国クリントン政権下の副大統領アル・ゴア氏が話し上手に講演して、実に説得的に二酸化炭素濃度の産業革命以来から近年に至るまでの上昇により、温室ガス効果から北極・南極・エベレスト・アルプスなどの氷が解けて、海水の膨張も加わり海面が上昇し、南太平洋の島々が水没して消えてしまうどころか、低地に街を築いたイタリアのベニスやオランダの低地の街々まで危ないと聞いた。今やそれをしのぐ危険に満ちているとのことで、要勉強の課題である。
本書は、第1部で「気候崩壊の連鎖が起きている」と指摘し、もはやグローバルな連鎖である(第4章)とか。しかも、この「水没する世界」(第8章)の上では、「気候変動によるさまざまな影響」(第2部)として、「頻発する殺人熱波」(第6章)のため、「史上最悪の山火事」(第9章)が頻発して森林が失われ、台風などの「自然災害が日常的に」(第10章)頻発して風水害等が生じ、さらに植物さえも生育せず「飢餓が世界を襲う」(第7章)どころか、「水不足の脅威」(第11章)や「大気汚染による生命の危機」(第13章)にまで曝されているとか。
3年前の広島市や、去年の梅雨前線での線状降水帯からの集中豪雨による熊本はじめ各県での洪水・冠水・山崩れ被害もこれによるのかと心配になる。
したがって、化石燃料の需要抑制のため、二酸化炭素の排出量規制と安定化に炭素税の導入や、発展途上国などから有償での排出権の購入がよいとする佐和隆光氏ら経済学者の論もある。一方、気候の温暖化は生じているが、それ自体1400年から1800年の小氷河期からの回復過程による地球の自然変動で、温暖化効果への二酸化炭素の寄与度は6分の1でその本体ではないとする赤祖父俊一氏がある。科学者の98%が人為的温暖化説に同意とは真実でなく、研究費獲得の方便でもあろうとM・モラノ氏は批判する。
しかし、「宇宙船地球号」との言葉もあるように、資源の有限な現在の地球上では、A①エネルギー資源の枯渇や、②地球の温暖化、③廃棄物の大量発生など環境悪化という困難な事態が生じており、B①エネルギー効率の向上、②人工物の飽和と循環の効率化、③自然エネルギーの開発など三点を基本原理としてそれらの具体化(ビジョン2050)促進への提起がある(小宮山宏著『地球持続の技術』1999年岩波新書新赤版647)。地球に負担をかけ過ぎないように生活するには自分もどうすべきか、勉強し続けねばと思う。
(宇治久世・宇田 憲司)
NHK出版 20年3月15日第1刷発行
デイビッド・ウォレス・ウェルズ著・藤井留美訳
定価 1,900円+税