佐々木蔵之介さんが主演するドラマ「ミヤコが京都にやって来た!」(1月10日~、毎週日曜夜11:55~12:25、ABCテレビ)は、人情派の町医者の話だ。協会の渡邉賢治副理事長らが医療指導を行い、京都府保険医協会が撮影に協力している。そのご縁で、今回、脚本を担当された今井雅子さんにドラマの背景や見どころなどを伺った。
―今回のドラマが生まれた背景などをお聞かせ下さい
「佐々木蔵之介さんが町医者のドラマを作りたい」ということで脚本のオファーを受けました。京都の町を見せられるよう、自転車で往診するというスタイルもできていました。そこからキャラクターを肉付けし、エピソードを膨らませていった形です。長らく会っていなかった娘が転がり込んで来て、一緒に暮らしながら、娘が父親と京都を知っていく流れにしました。娘から見て「医者らしくない、儲かってなさそうな医者」にしたいと思い、患者さんの頼みをどんどん引き受けて、便利屋のようになっている町医者になりました。
―「町医者」のイメージは?
わたしが生まれる前に亡くなった母方の祖父が町医者でした。また、夫の父方の祖父も町医者で、実家には開業していた頃の名残があり、町医者という職業には親しみを抱いています。「町医者」の言葉通り、地域に根を下ろし、親から子、さらには孫まで何代にもわたって患者さんと付き合いが続いているお医者さんというイメージがあります。
―主人公の町医者に込めた想いをお聞かせ下さい
主人公・空吉くうきちの名前は貧しい人々に念仏を唱えて回ったという空也上人から「空」のひと文字をもらいました。「空」は「くう」とも「から」とも「そら」とも読めます。娘と会えなかった12年間の空白を少しずつ埋めていくなかで、最初は便利屋のように見えていた父が、「病ではなく人を診る医者」なのだと娘が気づき、見直していきます。空吉もまた、日々の診療の中で、町医者だった亡き父の想い、志への理解を深めていきます。日頃から患者さんの暮らしに寄り添っているからこそ、病気にも早く気づけるし、急病のときにも頼られる。患者とじっくり向き合えるのは、自分で往診のペースを作れる町医者だからできることかもしれません。最近、患者の顔よりパソコン画面ばかり見ているお医者さんが多いなとさみしく感じているので、空吉のようなお医者さんがいたらという想いを込めました。
―今回のドラマで一番感じてほしいところは?
京都は学生時代を過ごした町ですが、「京都の時間」が流れていると思います。それは、町の真ん中を流れる鴨川の存在が大きいと感じています。空吉とミヤコ(京)に通じるのは、東京から京都に逃げて来たこと。そんな二人を見守る登場人物の一人のようなつもりで鴨川を描きました。京都の懐の深さを秋の鴨川の景色とともに感じてもらえたらうれしいです。