協会は9月26日、京都府内の各地区医師会長との懇談会をネット会議を併用して開催。地区医師会から17人(内ネット参加は9人)、協会から8人が出席した。「新型コロナウイルス感染拡大による診療報酬上の臨時的取扱い」「新型コロナウイルス感染拡大で見直しが迫られる医療政策」をテーマに意見交換を行った。国が求めるインフルエンザに備えた新たな体制整備に向けての課題が浮き彫りになった。
開会に際し鈴木理事長は「人との接触機会が増えており、この秋以降が心配。特に冬はインフルエンザが流行し、新型コロナウイルスとの同時感染により患者が増える事態が危惧される。先手を打って対応策を考える必要がある。地区での議論を聞き、協会の政策に反映し、厚労省、京都府・京都市に要請していきたい」とした。
各地区の対応と浮き彫りとなる課題
10月中にインフルエンザに備えた新たな体制整備を求める事務連絡が9月4日に厚労省から出されたことに対して、地区からは「あまりにも時間がなさ過ぎる。これまでの体制と大きく変わるので本当に大丈夫なのか危惧している。かかりつけ医として対応することはある程度必要だと思うが、やはり公的な発熱外来などを各地区で設置することも必要ではないか」など困惑の声が多く出された。
一方で体制整備に向けた取り組みが進んでいる地区もあり、ある地区では検査センター方式で唾液によるPCR検査を週2回から始めて(最終的には週5日)、1日2時間程度実施。20~30例の検査が可能であり、地区医師会員からの紹介で予約を取って行うと報告された。
今後、診療・検査医療機関(仮称)として発熱患者をかかりつけ医が対応することに伴い、大きな問題となるのが、医師・スタッフが新型コロナウイルスに感染した場合の補償と、風評被害である。特に補償問題に関して、地区からは「医療機関の職員や医師が感染した際の休業補償などがわからない中で、診療・検査医療機関を募集しても、誰も手を上げないのではないか」「新型コロナウイルスに感染して休診しなければいけなくなった場合や命に危険が及んだ場合はどう責任を取るのか。地域住民を守らなければいけないが、会員も守っていかなければならない」などの意見が出された。また、診療・検査医療機関の公表に関して「検査実施医療機関は公表されていないが、せめて地区医師会には教えてほしい。そうでなければ患者に医療機関を紹介できない」との意見や「内々だけで情報を共有しても、患者にネット等で公表され、その医療機関に患者が集中してしまうのではないか」との意見も出された。実際にPCR検査を実施している医療機関を受診した患者から情報が拡散してしまい、かかりつけの患者以外の方がたくさん受診され、日常診療どころではなくなり委託契約を解除せざるを得なくなった医療機関もあるとの実例も報告された。
その他にも、検査センターの設置場所や、地域住民の反対の問題、内科以外のかかりつけ医での対応などの課題が議論された。
公的な発熱外来の設置が不可欠
地区からの意見を受けて、協会からは「補償や風評被害への対応は、地区医師会や京都府医師会ではできない。国・行政が主導して場所の確保や補償・風評被害等への対策をしなければならない。体制整備には医療機関同士の連携、行政との連携が不可欠である。今冬、医療機関にインフルエンザ患者や発熱患者が殺到すると、医療機関では対応できなくなるため、公的な発熱外来の設置が必要だ。今後の地区医師会との懇談会では、同時流行や同時感染に備えた診療体制について地区の実情を聞きながら考えていきたい」と述べた。(関連2面)