協会は8月5日、京都府に対し「診療報酬の特例」(地域別診療報酬)の活用をしないよう国に求める要請を行った。
奈良県の荒井正吾知事が7月19日、全国知事会の新型コロナウイルス対策本部会合で、感染拡大により経営が悪化した医療機関を支援するため、高齢者の医療の確保に関する法律第14条に定められた「診療報酬の特例」の活用検討を表明した。21日にも知事記者会見で、医療機関の影響調査を踏まえて診療報酬単価を11円、12円で濃淡をつけたいとし、保険者協議会の協議を経て国に意見提出したいと述べた。
荒井知事は、2年前にもこの地域別診療報酬を打ち出し、第3期医療費適正化計画で医療費目標を達成できない場合は特例を活用して単価引き下げをして「医療費水準を抑制していく」と述べている。この仕組みを重視した財務省は、仕組みはあっても活用不能と考えられてきた状況突破を期待して財政制度審議会・財政制度分科会で「奈良モデル」を紹介し、「新たな財政健全化計画等に関する建議」に「速やかに活用」するよう書き込んだ。
こうした動きは、国保の都道府県化を機に都道府県が国の企図する医療費抑制を重視する姿勢に転じる表れとして協会は警鐘を鳴らしてきた。また、診療報酬の地域差撤廃を実現させ、全国統一の単価にして国民が等しく安心・安全の医療を受けられる国民皆保険制度を実現させた歴史に逆行し、その根幹を揺るがすものと批判。保団連近畿ブロック各協会とも共同し連名で断固反対するとの緊急声明を発表している。
今回の荒井知事の提案は、新型コロナウイルス感染拡大により経営が悪化した医療機関への支援を理由にしたものであるが、目的や方法のいかんにかかわらずこの仕組みの活用そのものを行うべきではない。
医療機関への経営支援も要請
一方で、7月19日の全国知事会による国への緊急提言で、新型コロナウイルス感染症の患者を受け入れていない医療機関においても受診控えもあり経営が厳しくなっている状況に理解を示し、対応を求めていることを心強いと評価。協会が国に求めている公的支援の要請にもふれ、国に新型コロナの影響で経営悪化している医療機関への助成の働きかけを行うとともに府としても支援の拡充をしてほしいと求めた。
(関連6面)