対象者:88人 回収数:86人(回答率:98%)
代議員、一般会員、役員の別とクロス集計、診療科目毎の回答者数とクロス集計の報告は省略し、概要のみにとどめる。
電話等による初診 9割実施せず
専用ソフト・アプリの利用者はなし
(1) 新型コロナウイルス感染防止による診療報酬の臨時的取扱いとして、電話等による初診が認められているが、実施、算定しているか質問したところ、しているのは1割で、約9割がしていなかった(図1)。
している9人に方法を質問したところ、全員が電話であり、3人がLINE、Skype、ZOOM等の通話ソフト・アプリを併用。オンライン診療専用ソフト・アプリの利用者はいなかった。また、実施してみて問題や危惧を感じる例がないか質問したところ、5人があると回答。内容としては「電話のみでは詳細把握が困難」「電話で少しおかしいと思い、診察した結果、心不全が判明」「全てを電話だけで済まそうとする場合があった」「整形外科診察では関節駆動域角度等の測定や反射の診察が要る」「誤診の恐れを棄却できない」との意見が出された。
一方、していない方に理由を質問したところ、直接問診、触診しないと診察できない75%、誤診につながる恐れを危惧50%、電話等では診断できない37%、検査、画像診断をしないと診断できない32%、医療を安上がりにしようとする方向に加担したくない22%であった(複数回答。図2)。
全員に対して点数が214点とされていることをどう思うか質問したところ、288点を算定できるべきが52%、214点で妥当が43%と意見が分かれた(図3)。
協会が国へ「電話等による初診に関して、コロナ禍が終息した場合、直ちに廃止すること」を求めていることに対して賛否を質問したところ、廃止を求めることに賛成が9割弱であった(図4)。
電話による医学管理等
6割が通常の点数算定を求める
(2) 次に、慢性疾患等の患者について電話等により再診を行った場合、限られた医学管理等や通院・在宅精神療法について147点を算定できるが、実施、算定しているか質問したところ、しているのは3割弱で、7割強がしていなかった(図5)。
している方22人に方法を質問したところ、全員が電話であり、1人のみLINE等の通話ソフト・アプリを併用。オンライン診療専用ソフト・アプリの利用者はいなかった。また、実施してみて問題や危惧を感じる例がないか質問したところ、6人があると回答。内容としては「もともと通院のモチベーションの低い方が電話再診で固定し血液検査等が滞る」との意見が出された。
一方、していない方に理由を質問したところ、直接問診、触診しないと診察できない65%、電話等では診断できない48%、誤診につながる恐れを危惧38%、検査、画像診断をしないと診断できない25%、医療を安上がりにしようとする方向に加担したくない24%であった(複数回答。図6)。
全員に対して147点を月1回しか算定できないことについてどう思うか質問したところ、通常の点数を通常の回数算定できるべき59%、147点1回で妥当33%とやや分かれた(図7)。
(3) (2)の147点を1回だけ算定できる取扱いは、対象の医学管理等が限定されているが、これら以外の医学管理等(小児特定疾患カウンセリング料、皮膚科、耳鼻咽喉科、婦人科の特定疾患指導管理料、慢性疼痛疾患管理料など)についても、電話再診で算定できるべきという考え方をどう思うか質問したところ、算定できるべきが約5割、算定するのは無理があるが3割とやや分かれた(図8)。
受診手控えで症状悪化、悪化の懸念
「ある」が4割
(4) コロナ禍による受診抑制が指摘されている。受診の手控えで症状悪化、悪化が懸念される患者がいないか質問したところ、4割がいると回答した(図9)。
具体的な事例は29人が回答。「緑内障患者で薬剤が切れて眼圧コントロールができていない」「体重増加や可動領域の減少(拘縮)」「痛風や気管支喘息は発症に直結するので心配」「糖尿病、高血圧等で内服が切れて悪化」「長期処方を希望されるケースも多々あり、高血圧などでは夏季になり、Ca拮抗剤がover-doseになっていることがあった」「慢性中耳炎、特に術後の耳内痂皮が増多しており処置が後になるほど大変」「慢性副鼻腔炎の急性増悪を来したが受診が遅れ、著明な脱水症状を来した。数日間の点滴を要した」「急性感音難聴の可能性があるにもかかわらず受診が遅れたため、改善、治癒しない症例があった」「肛門周囲膿瘍で発熱があり、診療してもらえないと思ったとの例あり」「管理栄養士の食事指導、ニコチン依存症管理で第2~4回目の診療を受けてくれない」等の例が寄せられた。
(5) 電話等による診療を実施している28人に対して、一部負担金の徴収方法を質問したところ、次回来院時現金徴収が24人、銀行振込が3人で、キャッシュレス決済との回答はなかった。
オンライン診療の算定要件緩和
反対5割
(6) 経済財政諮問会議ではCOVID―19と共存した「新たな日常」の構築と称して「医療・介護におけるデジタル化の加速」を進めるとしている。オンライン診療の算定要件を緩和し、容易化することを議論しているが、これをどう思うか質問したところ、反対が5割強であった(図10)。
条件付き賛成と回答した12人に対してその条件を訊いたところ、11人が回答。「初診は除外。一定以上の期間病態が安定している患者に限定」「必要機器の導入への費用負担の軽減、キャッシュレス決済の手数料の軽減」「支障のない疾患を選ぶべき」「リスク(ハッカー等によるデータ盗みなど)の担保」「医学的に有効性、安全性が確実に検証された項目のみとする」等の意見が出された。
20年4月以降、オンライン診療を実施する医師は、厚生労働省の指定研修受講が必須だが、7割弱が知らなかったと回答した(図11)。
オンライン資格確認
導入したい1割にとどまる
(7) 最後に、2021年3月から、オンライン請求の回線環境を利用して、マイナンバーカードや枝番付き被保険者証による、オンライン資格確認の制度が導入される(利用申請した医療機関のみ)が、導入しないが約4割、決めかねているが約3割で、導入したいとの回答は約1割にとどまった(図12)。欄外に自由意見として「電子カルテの常時オンライン化が必要らしく、セキュリティ上問題と考えている」との記述があった。