私の趣味 ろくもん乗ったもん ええもん食ったもん ―― 平成掉尾の小旅行伝説 村上 匡孝(綴喜)  PDF

 コロナ禍で籠る5月のTVは再放送や思い出の番組だらけ。私は昨年の平成の晦日の“鉄”旅を思い出して懐かしんでおりました。
 朝の京都を発って、名古屋から「スーパーしなの」で木曽路の車窓、松本平から雪の穂高連峰、日本三大車窓の姨捨のパノラマ展望を楽しみました。長野駅ホームの旨い信州そばをすすり、乗り換えた長野電鉄ローカル線の旅の先は葛飾北斎ゆかりの地、北信濃の小京都・小布施です。春爛漫、圧巻絢爛の八重桜並木。桃、梅、桜、菜の花、春の信州は花の競演。戸隠連峰や北アルプスを背に彩りも鮮やか。散策後は、ロケ名所の昭和レトロ、小布施驛で寛いだ後に長野に戻り、馬刺しなど信州の味覚を堪能しました。
 翌早朝は善光寺まで散歩拝観。その後、乗車前に買い込んだ超人気パンを朝食の友に、信越線鈍行で軽井沢に移動します。旧軽井沢驛舎の特別室で茶を喫し、信濃追分の馬追節で歓待されるひと時。しなの鉄道の特別列車「ろくもん」に乗るゲストの特権です。「ろくもん」は真田氏の旗印、六文銭からとった名称。豪華な車内で、浅間山を眺めながら、軽井沢フレンチとスイーツのランチを味わい、途中駅のホームでもてなしを受けながら長野に至る2時間半の汽車旅。贅沢満腹満喫でした。
 午後はレンタカーを駆って秘境の魔境、修那羅峠を訪れ、夥しい石仏群の中を散策しました。宿は山里の秘湯、別所温泉。本物の源泉かけ流しに英気を養いました。翌日は、朝湯の後に朝靄の中を温泉散策。別所電鉄別所駅のザ・昭和の驛舎と長閑な一両鉄道に憩います。その後、真田氏の本拠、上田城と真田郷を訪ねました。信濃の産物を買い込んで北陸新幹線「かがやき」で東京へ。皇居前で令和初詣に並ぶ群衆を横目に、星付きイタリアンの夕餉ののち「のぞみ」に乗りこんだ、平成の大晦日の思い出でした。

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