銷夏特集 残暑お見舞い申し上げます  PDF

2020年 夏  京都府保険医協会 役員・事務局一同

訪問 お仕事拝見!目指すは一流のクラフトビール 障害者が胸張れる仕事を求めて

 在宅医療を中心とした精神科クリニックで、日々重度の精神障害を抱える患者さんと向き合う高木俊介医師(中京東部)。一方で、酒類(ビール・発泡酒)の製造、販売を行う株式会社一乗寺ブリュワリーの経営者でもある。
 高木医師は開業時から、多職種連携チームが患者を訪問し支援する「包括型地域生活支援プログラム」(ACT)を導入。医療サービスや福祉サービスという枠にとらわれず、その人らしく地域で生活するためのあらゆるサポートを行うというものだ。このサポートの中で就労支援にも取り組んでおり、「社会的にも認められる仕事を」と探すうち、ビールに目が止まった。
 ビール製造免許を取得するには年間最低でも2000kLという生産量が決められており、実質大規模事業者しかビールが作れなかった。しかし、96年に規制が緩和され、小規模事業者もビール製造が可能に。多くの地ビール会社が設立されたが、製造技術がなかなか追い付かず、倒産が相次いだ。一方でビール職人は当初の流行の頃からぐんぐんと腕を上げ、新たに品質を重視した職人技のビールという意味の「クラフトビール」が台頭。
 その美味しさに興味を持ち調べてみたら、それほど複雑な工程ではない。「複雑でなく、しっかりとしたものができるのなら、障害者の仕事に向いているのではないか」。これが夢の第一歩となった。
 11年に「一乗寺ブリュワリー」を左京区に設立。当初は赤字経営が続き、医院のコンサルタントが高木医師に経営をあきらめさせようと、京都の飲食店経営者を紹介。経営の難しさを説くはずが、その経営者は高木医師の趣旨に共感。協力を得ることになり、ビアパブ(中京区)も開業した。「心強い共同経営者を得た」と笑って話す。
 一乗寺ブリュワリーではまだ直接障害者を雇用していないが、群馬県の障害福祉サービス事業所「菜の花」で麦を作ってもらい、ひきこもりの若者たちを農業で支援する宮城県のイシノマキ・ファームで作っているホップを使って、「ふぞろいの麦たち」というクラフトビールを製作。高木医師は「間接的ではあるけれど、障害者がかかわった初めてのクラフトビールが作れた」と話す。
 ACTを導入していることもあり、たかぎクリニックはチームで動く。最終的な責任はもちろん医師が持つが、一晩じっくり話を聞く、外出に付き合うなど、「精神保健福祉士や作業療法士らがケアの中心を担うチーム活動。決して暇ではないけれど、自分の夢を形にするための時間は持てた」とのこと。ビール生産量を増やそうと工場の拡張も行った。
 その矢先に、今回の新型コロナウイルス感染症拡大である。「さあ、これからという時に悔しい思いをしているが、これも糧に障害者が『これが私の仕事です』と胸を張って言えるような働く場を整えていけるよう踏ん張りたい。そして障害者が働くことが特別ではない、多様性を認め合える社会になれば」と語った。

拡張したばかりの工場にて

写真右から●①Destroy Angel IPA:ホップと麦芽のしっかりとした風味。アルコール度数高め/②ゴールデンエール:オリジナルブレンドのスパイスを使ったフルーティなビール/③ベルジャンウィート:紅茶のような甘い香りの立つ、すっきり飲みやすい小麦ビール/④レッドエール:香ばしい麦芽の香りが漂う、すっきりした優しいコクのあるビール/⑤スタウト:複雑なロースト香とカカオ香が引き立つ黒ビール
その他にも、京都亀岡で採れた麦とホップで仕込んだ優しい京都のビール「亀岡ハーベストブリュー」や水尾の柚子の爽やかで上品な風味の「ゆずヴァイス」などがあります。
(京都・一乗寺ブリュワリーパンフレットより)

購入はオンラインでも可能
オンラインショップ https://ichijoji.thebase.in/age-verification
一乗寺ブリュワリーホームページ http://kyoto-ichijoji-brewery.com/

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