死んでたまるか10 垣田さち子(西陣) 脳卒中などの対策基本法  PDF

 日本人の3大死因は、多い順に「悪性新生物」「心疾患」「脳血管疾患」である。私が国試を受けた約半世紀前には、死因第1位は「脳血管疾患」だった。東北地方に多く、塩辛いおかずをちょっと食べて、山盛りのご飯をかき込む食生活が問題とされた。塩分過多の日常を見直す生活改善運動などが提唱され、様々な取り組みがなされた。最近、幼児期に母の里で食べておいしかった思い出があるので、今では珍しい“へしこ”を食べてみてあまりの塩辛さに驚いたことがある。血圧も上がるだろう。
 2018年の総死亡数の半分以上をこれら三つの死因が占めている。入れ替わりはあるものの、50年間以上にわたって3大死因が上位を占め続けてきた。1950年以前は結核など感染症による死亡が多かったが、これら三つの死因は、日本の経済成長とともに増加し、社会構造の変化、生活スタイルの変容を促し、生活習慣病という言葉を生んだ。新自由主義の健康観といえる疾病の自己責任論が強調された。悪い生活習慣が、病気をもたらす。不適切な食事、運動不足、睡眠不足、喫煙などの悪い生活習慣に陥ってしまう現代社会の過酷な生存環境は問題にしない。
 「悪性新生物」「心疾患」は増え続けているわけだが、1965年以来対策が取られ、死亡数の減少している「脳血管疾患」は、要介護状態の原因疾病として注目され、2017年版高齢社会白書(内閣府)によれば、男性の要介護状態原因の26・3%が脳血管疾患による。後遺症の軽減を目指してリハビリテーションの重要性が再確認された。
 脳卒中治療ガイドライン2015〔追補2019〕が脳卒中学会から発表され、18年12月には、「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」が成立した。
 脳卒中が起こったときの超急性期治療として、血栓を溶かす薬を発症から4~5時間以内に投与する「血栓溶解療法」や、血栓が詰まった血管にカテーテルを入れて血栓を絡め取る「血管内治療」なども進歩している。いかに早く発見して治療体制が整った医療機関に搬送できるか、そして、その後の回復期の治療やリハビリテーション、維持期の生活まで切れ目なく適切な医療を提供できるかという課題がある。
 関電病院でも転院翌日からリハビリを開始。午前中はPT、そのあとOT、午後3時からPTの計3時間。最初の筋力チェックでは、和歌山県立医科大学附属病院でのリハビリのおかげで、結構筋力がついていることが分かった。しかし、左半身感覚麻痺、中心動揺、両側不随意運動があり、まずはハーネスで体幹を吊り上げトレッドミル歩行を試してみた。大丈夫、1人で歩ける。しっかり目で確認できれば、足運びは問題ない。筋力を落とさないよう頑張るしかない。

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