診療外でも多様な役割
週当たり外来標榜時間は「20~30時間」43%と「30~40時間」38%で、全体の8割を占めた。40時間以上は6%。20時間未満は11%あるが、その半数は「高齢」が理由で、在宅に力を入れているところも見てとれる。
標榜時間以外の時間外診療、在宅診療、書類作成等を加えた外来実労働時間になると、「60時間超」が5%現れ、半数近くが40時間を超える。在宅診療には167人(48%)が取り組み、半数は4時間未満だが、最大は32時間。書類作成には平均5・5時間、10時間以上も55人(16%)だった。なお、標榜時間外でも緊急の電話問い合わせに、217人(62%)が対応していると答えた。
さらに、校医・園医、集団健診、医師会等の業務など地域医療活動を加えた総労働時間では、さらに上方にシフトし、「60時間超」は9%となる(図1)。この過労死ライン「60時間超」について、各協会の同様の調査によると、神奈川で25%、大阪で20%、東京で17%などの値がでていたが、本調査結果はその水準には至らなかった。
こうした地域医療活動への参加状況(図2、2面に掲載)をみると、「校医・園医」が165人(47%)、「医師会等の業務」が153人(44%)、「(特定、乳幼児)集団健診等」が112人(32%)、「休日急病診療の当番医」が89人(25%)、「介護認定審査会」が81人(23%)、「産業医」73人(21%)など多様な役割に従事している。
「その他」には、障害者認定審査会、認知症初期集中支援チーム、JMAT、京都刑務所視察委員、地域医療自治体アドバイザー、福祉事務所嘱託医、大学等での授業、などさまざまな活動が挙がった。一方で、このような活動への参加に記入のない方も57人(16%)あった。
約7割がストレス状態
このような労働内容が生活や精神状態にどのような影響を及ぼしているかについて聞いた。家族との夕食は、「ほぼとれている」が209人(60%)に対し「とれていない」が132人(38%)に上った。充分な睡眠については「ほぼとれている」が242人(69%)に対し「とれていない」は97人(28%)だった。余暇や趣味の時間については「ほぼとれている」は188人(54%)で「とれていない」が152人(43%)だった。精神的ストレスについては「強く感じる」67人(19%)、「やや感じる」168人(48%)、「あまり感じない」106人(30%)で、67%がストレス状態におかれていることがわかった(図3)。
充足感あるも点数評価低い
地域医療・地域社会への貢献の充足感については、「貢献しており充実感ある」が192人(55%)、「貢献しているが充実感ない」が107人(30%)で、「貢献していない」も42人(12%)だった。自分の仕事の地域住民や行政からの評価については、「正当に評価されている」が231人(66%)、「評価されていない」が83人(24%)。
収入が自分の活動にほぼ見合ったものになっているかについては、「感じる」が209人(60%)、「感じない」が123人(35%)で「過分である」も11人(3%)だった。自分がやりたい医療ができているかについては、「できている」が216人(62%)、「できていない」が116人(33%)。
一方で、自分が行っている医療が保険診療点数で十分評価されているかについては、「評価されている」は70人(20%)に過ぎず、「評価されていない」は163人(46%)で、「わからない」も106人(30%)だった(図4)。この5項目は、16年に京都で開催した保団連医療研究フォーラムで行った全国調査と同じもので、回答の傾向もほぼ同様であった。
自由意見欄には、「毎日しんどいです。必死です。食事と睡眠だけはキープしています」「医師会や地域会議に診療を一部制限して出務するがボランティアが多い。交通費すら出ないものもある」「開業医は死ぬまでブラックだと思う。ホワイトになるには点数アップ、仕事時間ダウンしかない」などの声や、「開業医は楽していて勤務医は働かせ過ぎという論調は医師の分断策と思うが、私の経験では勤務医の時の方が開業医より相当楽だったように思う。勤務医は忙しくても時間の区切りがつけられたことが大きいと思う」「残業が多い人がいるから残業の少ない人に仕事を回して残業時間を減らしても、結局トータルの残業時間は変わりません。医師数を増やして残業を減らすことが働き方改革だと思います。その結果、一人当たりの収入が低下することは仕方がないと思います」など働き方改革への意見が見られた。
なお、回答者の内訳は、無床診療所333人(95%)、有床診療所7人(2%)、病院10人(3%)。主たる科目は内科が172人(49%)、次いで整形外科が29人(8%)、小児科と眼科が23人(7%)、外科が20人(6%)。また、開業形態は職住分離型が241人(69%)、職住一体型が107人(30%)であった。
協会は2019年11月から20年4月にかけて「開業医の労働内容実態について」会員アンケートを行った。「医師の働き方改革」で勤務医の時間外労働が問題とされたが、開業医については事業主であり労働基準法の対象外であることから議論の埒外におかれている。しかし、国は外来医療費の抑制を目的として、開業医のあり方も見直しを図ろうとしている。そこで、開業医の労働実態を明らかにする目的で本調査を実施した。診療時間と診療外労働を合わせた週当たりの総労働時間は31人(9%)が過労死ライン(週60時間、月80時間時間外)を超える「60時間超」にあることや、ストレス状態にありながらも充足感を感じながら従事している実態が明らかになった。協会会員のうち病院勤務医を除いた開業医会員2067人を対象とし、351人(17%)が回答した。
図1
①外来標榜時間/週
②外来実労働時間/週
③総労働時間/週
図2 地域医療活動への参加状況(複数回答)
図3
家族との夕食をとれているか
充分な睡眠時間をとれているか
余暇や趣味の時間をとれているか
精神的ストレスを感じているか
図4
地域医療・地域社会への貢献について充足感
自分の仕事は地域住民や行政からの評価
収入は自分の活動にほぼ見合ったものか
自分がやりたい医療ができているか
自分の医療は保険診療点数で十分評価されているか