本人働く意欲あり、院長も人手不足でお願い 60歳代の雇用
来年60歳になる職員が2人います。1人は看護師、1人は受付です。60歳後の雇用継続の有無や労働条件について話合う時期に来ています。本人が希望するなら雇用継続はいいのですが、労働条件について変更しようと思っています。
◆65歳までの雇用確保措置
定年(65歳未満の者に限る)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の65歳(経過措置あり)までの安定した雇用を確保するため
①定年の引上げ
②継続雇用制度の導入
③定年の定めの廃止
のいずれかの措置を講ずることが義務付されています。
◆定年退職者を継続雇用するにあたり、従来の労働条件を変更して雇用することは可能か
事業主は、前記の三つの雇用確保措置のうち②の継続雇用制度を導入する場合は、希望者全員を制度の対象としなければなりません。
継続雇用後の労働条件については、高年齢者の安定雇用の確保という高年齢者雇用安定法の趣旨を踏まえたものであれば、労働時間、賃金、待遇を、事業主と労働者の間で決めることができます。ただし、就業の実態は変わらないのに賃金を引き下げるような場合、定年前後の待遇差が不合理なものと判断される場合もありますので注意が必要です。(参考判例 長澤運輸事件 最高裁平成30年6月1日第二小法廷判決)
◆活用しよう 高年齢雇用継続給付
高年齢雇用継続給付とは
60歳到達時等の賃金月額よりも75%未満に低下した賃金で働く場合、その低下した賃金の最大15%を限度に給付金を支給し、60歳以降の継続雇用または再雇用を支援するものです。(表)
基本給付金 60歳に達した日以降失業給付(基本手当等)を受けることなく働いておられる方への給付です(支給対象となる期間は65歳に到達した月(月末まで被保険者の場合に限る)までです)。
再就職給付金 60歳以降に失業給付(基本手当等)を受け、100日以上残して再就職された方への給付です(支給対象となる期間は失業給付の残日数が100日以上は1年間、200日以上は2年間となります。ただし、支給途中で65歳になった場合は、その月(月末まで被保険者の場合に限る)までとなります)。
●60歳到達時点の賃金とは、どのように計算されるのですか。
原則として、60歳到達時(60歳到達時点で被保険者期間が5年未満の場合は5年に達した時点)前6カ月間の賃金の合計額を180で除して得た日額に、30を乗じた額が60歳到達時等の賃金となります。
●院長として
だれでも自分の60歳以降については、あれやこれや悩み考えるものです。できるだけ早く本人の希望を聞くようにして下さい。そして賃金や労働時間などの労働条件についてどうするのか相談するようにしましょう。
給付金には、一定の要件や支給申請期限があります。詳しくは最寄りのハローワーク(公共職業安定所)にお問い合わせ下さい。
◆年次有給休暇の取り扱いは
形式的には従前の雇用契約とその後の労働契約とは別個のものですが、単なる身分の切替えであって実質的には雇用関係が継続しているものと認められ、勤続年数を通算しなければなりません。定年退職金の支給の有無とは関係ありません。
◆人手不足、時間に少し余裕のある60代の雇用も視野に
60代雇用に消極的だった顧問先の院長が少し照れ笑いしながら、「60代2人の看護師は今や貴重な職員。終業時刻後も、最後まで残ってくれるのがこの人達になっている」とのこと。正職員の看護師は30代、40代含め4人、それにパートの看護師の3人の職場で、30代、40代それにパート職員は、家庭のこともあり、定時で上がってもらっているとのこと。受付終了時間ぎりぎりに来院される患者、急患等々への対応も医療機関では避けられません。本当にありがたいものです。
表 高年齢雇用継続給付の給付金早見表(2019年8月1日現在)
60歳時の賃金 支給対象月の賃金 400,000 350,000 300,000 250,000
350,000 0 0 0 0
300,000 0 0 0 0
250,000 32,675 8,175 0 0
210,000 31,500 31,500 9,807 0