日本国内においても新型コロナウイルス肺炎の感染が広がる中、協会は2月26日、京都府、京都市に「新型コロナウイルス等感染症対策の強化を求める緊急要請」を提出した。要請は、医療機関におけるマスクや消毒液供給状況の緊急アンケート結果を受けて、備蓄している災害時用等のマスクを医療機関に供給し、日常診療における院内感染対策が滞りなく行えるよう対処することともに、感染症対応病床の公的医療機関における日常的確保、保健所機能の強化や適切な情報提供などを求めた。
要請は京都府、京都市の担当に直接届けるとともに、府議会各会派にも届けた。府宛の要請項目は以下の5項目。京都市宛の③項目目には、かつて行政区単位に設置していた保健所を直ちに再設置し、医師などの専門職を増員・再配置することを加えて求めた。
①京都府で備蓄している災害時用等のマスク・消毒液を府内の医療機関に供給し、日常診療における院内感染対策が滞りなく行えるよう対処すること。
②治療体制確保のために協力する民間医療機関への財政支援を行うこと。将来においてもこうした新興感染症リスクに対応するため、感染症対応病床の公的医療機関における日常的確保を行うことなど地域医療計画、公立・公的病院の再編を見直すこと。
③医師の判断を尊重して速やかに適切な検査が行えるような体制をとること。保健所と京都府保健環境研究所について、抜本的な職員増をはじめ機能を強化すること。国に対し対策強化を求め、米国の疾病管理予防センター(CDC)のように迅速かつ強力な対応ができるような体制の構築を求めること。
④高齢者などの重症化予防のため早期の医療提供ができるよう本来のフリーアクセスを保障し、国保資格証明書による受診であっても通常の国保証と同様に現物給付とすること。また資格証明書の発行自体をやめること。
⑤不確かな情報流布やパニック助長、差別やいじめの発生を防ぐため、情報を公開し、府民、マスコミ、医療機関等への情報提供は、人権に配慮しつつ引き続き丁寧に行うこと。
病院・代議員緊急アンケート結果 マスク・消毒液 「不足」 が顕著に
新型コロナウイルスの影響によって、府内の医療機関でもマスク等が供給されなくなっていることから、府内の会員病院(157病院)および協会代議員(87人)にFAXにて緊急にアンケート調査を実施。その結果、病院76(48%)、代議員41(47%)の回答があった(2月26日の締切後のものも加えたのでマスコミ発表とは少し異なる)。
マスク「足りない」「いつまでももたない」病院89%、代議員70%
マスクの在庫状況について、病院では「現状足りているが、一定期間内までしかもたない」という回答が67%に上り、「すでに足りない」22%と合わせて89%となった。「一定期間」のうち77%は3月中になくなるとしている。代議員では、「現状足りているが、一定期間内までしかもたない」が41%、「すでに足りない」29%で、合わせて70%となった(図1)。
供給状況については、「注文しているが入荷しない」が病院71%、代議員76%といずれも7割を超えている。
「困っている」 病院95%、 代議員68%
今後の対応について、病院は「困っているので、行政に何とかしてほしい」が75%、「困っているが、様子を見る」が20%で、合計すると「困っている」という回答は95%にも上る。
代議員は「困っているので、行政に何とかしてほしい」が46%、「困っているが、様子を見る」が22%で、合計すると「困っている」は68%と、病院よりは若干低い割合となっている(図2)。
消毒液の在庫もいつまでも持たない状況に
消毒液についても同様の質問をしており、在庫状況について、病院では「現状足りているが、一定期間内までしかもたない」が55%、「すでに足りない」21%と合わせて76%と、こちらも高い割合になっている。代議員は、「現状足りているが、一定期間内までしかもたない」が37%、「すでに足りない」22%で、合わせて59%となる。
供給状況については、「注文しているが入荷しない」が病院39%、代議員44%と、マスクほどではないにしろ供給が滞っている状況がうかがえる。
「困っているので、行政に何とかしてほしい」は病院57%、代議員34%で、「困っているが、様子をみる」は病院26%、代議員32%となっている。
医療機関への物品供給、補助を求める声が多数
不足しているものは、マスク、消毒液にとどまらず、シールドマスク、N95マスク、プラスチック手袋、プラスチックガウン、防護服などの不足の訴えが見られる。「コロナだけでなく日常の感染防止対策に支障がある。病院で通常業務が行えるよう物品の供給は行ってほしい」「新型コロナウイルス対策を講じる際に必要な設備、備品類に対し補助金を出していただきたい」などの意見があった。
図1 マスクの在庫状況
図2 マスクの対応について
アンケートの報道相次ぐ
協会のアンケート結果および要請については、京都新聞・NHK京都(2/27)、朝日新聞(3/1)など多数のメディアが取り上げた。3月3日にはテレビ朝日「報道ステーション」で鈴木理事長、4日には同局「モーニングショー」で吉中理事がインタビューに対応。5日にも関西テレビ「報道ランナー」に福山副理事長が対応し、医療機関の実情を訴えて行政の対応を求めた。
4日の「モーニングショー」では、厚労省のコメントとして「医療機関向けのマスクは都道府県などの備蓄を使うのが基本」を紹介。出演者からは、「医療機関へ重点的に配るべき」などのコメントが相次いだ。これに対して厚労省がツイッターにて「厚生労働省では、感染症指定医療機関への医療用マスクの優先供給を行ったほか、都道府県の備蓄用マスクの活用や日本医師会や日本歯科医師会のルートを活用した優先配布の仕組みをお知らせしています」「引き続き、マスクの増産や全ての医療機関を対象とした優先供給を進めてまいります」と反応した。
国会では4日、政府がマスクの国保有量は743万枚で、民間放出できる枚数は「調査中」と報告。野党が「マスクが不足する医療機関などに放出すべき」と求めた(朝日3/5)。
テレビ朝日「報道ステーション」より
府が7万枚の備蓄放出を明言
このような中、京都府が動いた。府議会・予算委員会で5日、府の危機管理部が7万枚の「備蓄」マスクを医療機関と高齢者施設に向けて放出すると答弁。放出先は、感染症病床の指定医療機関を優先し、京都市も含み、開業医も対象になるとのこと。具体的には、京都市、京都府医師会と話をしているとのことだ。