新型コロナウイルスの感染が広がっている。厚生労働省は指定感染症に指定した。指定医療機関への入院や隔離、届出義務などが課せられる一方で、入院した場合の費用は公費負担となる。その後感染拡大を受けて政府の専門家会議は「国内発生の早期の段階」とした。市中感染に対してすべての医療機関が直面する状況である。京都では2人の感染が確認されたが、すでに軽快して退院している。
感染の拡大は続いているが、中国ではピークが過ぎたという見方も出始めている。感染症としてはインフルエンザよりも若干強い程度、重症リスクは高齢者や免疫機能が低下している場合、潜伏期間が長くその間にも感染が広がりうることなどがわかってきている。ワクチンの開発や抗ウイルス薬の治験が始まっているが、利用できるまでには時間がかかる。
京都府・市においても対策会議がもたれHP等で発信されている。2月11日には京都府医師会が主催して医療関係者向けの新型コロナウイルス感染症対策説明会が実施された。協会としても全力を挙げて対策に取り組む所存である。
対策の基本は、インフルエンザに準じ冷静な対応が求められる。医療機関では診察時には標準予防策をとることが必要である。保険医は最前線にあることから、第一線の医療機関での対応ガイドラインなどきめ細かな支援が必要である。マスクが入手しにくいため、都道府県の備蓄分を供給するなど官民挙げての対策が必要だ。感染対策のためのリソースの整備が、早急に求められる段階である。
厚生労働省は国内での患者の拡大に対応するため、一般の医療機関(一般病床)への入院を可能とする通知(2月10日)を発出した。個室収容またはコホーティング推奨、トイレは共同使用でないことなど、感染症指定医療機関の基準を参考にして適切に病床を確保することを求めている。
京都府における感染症病床は38床、うち京都市では京都市立病院の8床と府立医科大学附属病院の2床である。一般医療機関での受け入れ体制の整備は急務である。人的、物的、財政的支援について検討を行い、早急に実施すべきである。
診療を行う医師への感染が報告されている。医療の現場では医師不足などから、体調不良を自覚しても簡単に休むことができない現状があることを直視すべきだ。すでに外来閉鎖も起きており、医師の体制確保支援策が必要だ。
今回のような新興感染症のリスクに対応するためには、地域医療計画、公的・公立病院の再編、医師偏在対策については見直しが必要ではないか。これまでの延長線上ではない対応が求められる。
国立感染症研究所の年間予算は60億円である。ここ10年で削減されてきた経緯があり、検査体制の限界も露呈した。人獣共通感染症の水際対策などに取り組むとして、200億円近い予算措置がされた加計学園の存在感はない。アメリカには米疾病対策センター(CDC)があり、中国にも設置されている。方向転換して日本でもCDの設置が急務である。同時に、京都府保健環境研究所と京都市衛生環境研究所のような地方自治体の体制と、機能の強化を求めたい。
京都市では、新型コロナウイルス感染症専用相談窓口は1カ所である。多言語対応は京都府にしかない。観光都市として至急の整備が求められる。感染症対策において保健所の役割は地域住民に近い対策拠点として重要であるが、新型コロナウイルス対策では京都医療衛生センターの役割が見えない。各区役所に医療衛生コーナーが置かれているが、専門性の点から手薄感が否めない。医療衛生行政の総合的な改善が必要ではないか。
今回の新型コロナウイルスに対する対策をオール京都で行う中で京都の保健医療政策の充実につなげることを願うものである。
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