『開業医医療崩壊の危機と展望』 発刊を受けて 権利はたたかうものの手にある  PDF

寺内 順子(大阪社会保障推進協議会事務局長)

 「いつでも、どこでも、だれでも」、国民は日本中どこにいても同じ水準の医療をいつでも受けることができる、これこそが日本が世界に誇れる医療制度であるわけですが、外国に行けばこれは当たり前のことではありません。ましてや介護保険に至っては、介護サービスを受けるまでに申請・要介護認定・プラン作成等々数々の障壁があり、今、そのサービスも軽度者、低所得者が奪われようとされ、今いる介護労働者が高齢化し、低処遇の中で疲弊し、2040年まで持たないとまで言われています。
 一方、日本の医療制度を作り上げたのは、まさしく医師の、そして保険医協会などの運動があっての今なのだということを、この本を読んで再確認させていただきました。まさに権利はたたかうものの手にあるのだと。
 今、日本の国民がおかれている状況は非常に困難です。生活保護、介護保険、国民健康保険、子どもの貧困、ワーキングプア…すべてが最悪の時代であるように思えてしまいます。人は「今」に生きているので、「今」が最も困難だと思い、暗澹たる思いに苛まれます。しかし、「今」は「過去」から続き、今日は昨日があって明日に続く。そして私はいつも、先人たちの歴史を知り、励まされます。
 佛教大学の岡﨑祐司教授が16年11月に大阪社保協主催で開催した「地域包括ケアを問い直すシンポジウム」の基調講演で「ドクターは一番身近な科学者」とおっしゃっていて、まさに意を得た思いがしましたが、開業医は特にそうした存在であると思います。地域の中で、医療だけでなく、様々な運動の中心に、そして側面からの支援に携わって下さっている医師のみなさんがたくさんおられることがどれだけ、市民運動をはげましてくれているでしょうか。
 最後に。この本の副題が「これからの日本の医療を支える若き医師たちへ」となっています。こうした思いでこの本が作られたのだと思うとき、やはり、先人たちのたたかいを伝え、引き継ぐことが、私たちの使命でもありますね。そうしたことの学びもいただきました。
 京都府保険医協会のみなさま、ありがとうございます。

開業医医療崩壊の危機と展望―これからの日本の医療を支える若き医師たちへ
京都府保険医協会・編
かもがわ出版、定価本体1700円+税、2019年11月

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