社会保険労務士 桂 好志郎
曜日によって勤務時間が異なるパート職員の年休取得した期間の賃金
年次有給休暇を取得した期間に支払うべき賃金は、
①平均賃金
②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
③健康保険法による標準報酬月額の30分の1に相当する金額
のいずれかです。このうち③の方式については、労使協定をした場合に限って選択できます。このように、年次有給休暇を取得した期間の賃金については3つの方式が可能ですが、どの方式によるかはあらかじめ就業規則等で定めておくことが必要で、使用者がその都度任意に選択することは許されません。
(1)平均賃金を選択する場合
曜日によって勤務時間が異なるパート職員が取得した期間の賃金について、平均賃金を選択する場合の計算について説明します。
◆原則
平均賃金を算定すべき事由の発生した日以前3カ月間に、その職員に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいいます。
平均賃金 = 3カ月間の総日数(暦日数) / 直前3カ月間の賃金総額(支給総額)
※賃金締切日がある場合は、その起算日は直前の賃金締切日です。
※銭未満の端数が生じた場合、これを切り捨てることは差し支えありません。
なお、この算定期間中に次の期間がある場合には、当該期間の日数および賃金額を除外して計算することになります。
①業務上の負傷・疾病による療養のための休業期間
②産前産後の休業期間
③使用者の責に帰すべき事由による休業期間
④育児・介護休業期間
⑤試用期間
賃金の総額には、原則として、算定期間中に支払われる賃金すべてが含まれますが、次の賃金は除外されます。
①臨時に支払われた賃金(結婚手当、私傷病手当、加療見舞金、退職金等)
②3カ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
③法令または労働協約の定めに基づいて支払われる以外の実物給与
◆最低保障
賃金の一部または全部が日給制、時間給制または出来高給制の場合は、平均賃金を算定すべき事由の発生した日以前3カ月間に、その職員に対し支払われた当該賃金の総額を、その期間の労働日数で除した金額の60%が最低保障となります。
※平均賃金の原則により計算した金額を最低保障が上回る場合は、最低保障金額が平均賃金となります。
3カ月間の労働日数 / 直前3カ月間の賃金総額(支給総額) × 0.6
※ただし、賃金の一部が月給で決められている場合等については計算方法が異なります。
例)賃金締切日 毎月15日
賃 金 時給 1,000円、通勤手当 1日 1,000円
平均賃金算定事由発生日 3月1日
所定労働時間 月・金曜日 8時間、火・木・土曜日 4時間
休日・勤務日 水・日・祝日 休み、 勤務日はシフト表による
12月分 11/16~12/15
労働日数15日 総労働時間 84時間
賃金 基本給 84,000円、通勤手当 15,000円
1月分 12/16~1/15
労働日数5日 総労働時間 28時間
賃金 基本給 28,000円、通勤手当 5,000円
2月分 1/16~2/15
労働日数15日 総労働時間 84時間
賃金 基本給 84,000円、通勤手当 15,000円
①原則による計算
99,000円+33,000円+99,000円 = 2,510円86銭
30日+31日+31日
②最低保障による計算
99,000円+33,000円+99,000円 × 0.6 = 3,960円
15日+5日+15日
①と②を比較すると②の方が高いので、この場合の平均賃金は3,960円になります。
原則と最低保障額とを比較して高い方が平均賃金です
(2)所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払うことを選択する場合
上記の条件で、月曜日、金曜日に取得すると1日8000円、火曜日、木曜日、土曜日に取得すると1日4000円を支給することになります。