地域医療をきく!6 市立福知山市民病院編  PDF

424病院公表を受け
自院の立ち位置示すよい機会に

 地域の医療現場で抱える課題や実情を聞こうと、開始した「地域医療をきく!」。今回は、2019年9月26日に厚労省が再編統合対象として公表した、京都府内の公立公的病院が果たしている地域での役割の重要性を再確認するべく、まずは市立福知山市民病院の香川惠造院長より、市立福知山市民病院大江分院についてお話を伺った。

 ――424病院の公表で率直に感じられたことは
 今回の件は、国や自治体からの連絡ではなく、9月26日の一般の報道で知った。翌27日には病院の見解をホームページに掲載(下掲参照)。これが、私の率直な思いだ。

 ――大江分院の地域での役割について
 今回の424病院公表は急性期のマーカーを基本に定量的・網羅的・画一的になされたもの。それが各地域の現状と大きなずれがあるから、これだけ大きな反響を呼ぶことになった。
 15年に新大江病院を市民病院大江分院として引き継いだ。救急の告示はしているが、立脚点は、総合診療医をはじめ、地域で活躍できる医療人材の育成を行う病院、地域包括ケアのつなぎ目となる在宅療養支援病院と確認し、現在まで市民病院大江分院を運営してきている。
 厚労省が行ったような急性期の一部だけで病院を色分けするようなことは、地域での矛盾を引き起こす。地域住民には不安を与え、公表された病院は風評被害を被った。今回の公表が賢明だったとは言い難い。
 地域の状況を全く勘案しておらず、その点から言うと今回の批判や反響は当然の結果だろう。稚拙だったということだ。厚労省は当初から地域医療構想を各都道府県で練って下さいと調整会議を立ち上げさせたはず。今回の424病院もいろいろな角度での分析資料の中の一つとして、京都なら京都府に提示すればよい。その内容を調整会議などで議論し、厚労省の言うことがもっともだとなれば公表すればよい。しかし、今回はまず公表だった。
 国が公表することで、すなわち断行するんだという意思表示なのであれば、まだ納得できる。ところが反響が出たことで、材料を示しただけですよというのでは、稚拙さが増すだけだ。

 ――専門医の診療科別シーリングについて
 京都府が出した意見でも指摘されているが、京都府には大学病院が二つ存在し、研究者が多いこと。両大学、特に京都大学は府外に医師を派遣していることなどの考察がない。
 私は国が専門医にシーリングをかけるのは一定やむを得ないのではないかと考えている。しかし、各自治体の現状を勘案してもう一度修正をかけるべき。公表の問題にしろ専門医シーリングにしろ、国は発破をかけるだけで、そこを通じたディスカッションでよりよいものにしていこうという姿勢が共通して欠けている。
 ――地域医療構想調整会議について
 調整会議でも基本的な考え方の軸が必要。病床数だけが提起されているが、その数字がいかに正当であるかという理論武装は義務であり、また修正を行うことも義務だと考える。ところが国は投げかけだけで終わっている。例えば、急性期とは何なのかという機能づけも自治体がばらばらに行っている。各自治体に任せたというものの、本来はどの地域でも適用できる基準を国が出すべき。そういった立脚点が曖昧なまま、数字だけが出されていることに危うさを感じる。
 数値設定自体の是非を問う声もあるが、論理的な深みがあるかどうかによって納得度が変わっていくだろう。高齢者が増えていく中、急性期は少しずつ減らして、高齢者の生活に密着した医療の展開をとする、国が最初に提示した考え方は個人的には賛成だ。しかし、その議論の中から出てきた数字の根拠から実態とのズレが生じている。

 ――偏在指標について
 医師偏在指標についても、計算に用いた根拠の数字が出されていない。それがわからなければ、建設的な議論などできるはずがない。開示しないことで信用も得られない。政策に対しあまりにも無責任だ。
 こういった現状では、京都府の中でしっかり議論を進めていくしかないし、独自の指標を打ち出した京都府の医師確保計画の進め方は地域の実状を吸い上げようとしており、賢明だと個人的には感じている。
 公表の問題に戻るが、今回の問題を逆に自院の立ち位置を示すよい機会と捉え、広く住民に報せていくことも地域医療を守るうえで大事ではないか。

 平成27年度に大江分院に移行した後、医療機能は着実に増進してきている。訪問診療を開始し、在宅医療の人材育成に努めると同時に、レスパイト入院の需要にも対応し実績をあげているところである。
 また、本院とチームを組んで総合診療医の育成に努めている。さらに、市民病院をはじめ他の病院の患者さんの後方支援施設としても、しっかり機能を果たしている。
 一方、大江地区の人口は、年間約100人程度減少しており、それに応じて病床のダウンサイジングを図ることが肝要と考えている。本年8月には分院病床を4床、本院に移転し、68床に減床した。今後も医療環境の変化に対応し実情に応じたダウンサイジングをすすめていく。
 今回、大江分院は厚労省から再編統合が必要な病院として公表された。この再編統合の定義にはダウンサイジングや機能分化・連携などが含まれているが、これら全ては平成27年度の大江分院開院当初から既に進めているものであり今後も取り組んでいく予定である。なお、経営状況については市民病院の分院化以前に比べ、著しく好転している。
令和元年9月27日
福知山市病院事業管理者 香川惠造

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