公正・公平・透明・民主的な政治を求めて
理事長 鈴木 卓
新年あけましておめでとうございます。皆様方におかれましては希望と決意を胸に新たな年を迎えられたこととお慶び申し上げます。
昨年は令和元年のお祝いとともに京都府保険医協会創立70周年の記念すべき年でもありました。協会の2大理念(保険で良い医療を、と保険医の医業・生活・権利を守る)を展開してきたこの70年を振り返る契機となり、それを「京都府保険医協会70年史」と『開業医医療崩壊の危機と展望~これからの日本の医療を支える若き医師たちへ~』の2冊にまとめて上梓しました。国民皆保険制度の中で自由開業制、患者のフリーアクセスを守りながら世界一と評価される国民医療を担い、築き上げてきた日本の開業医の努力と活躍の現在の到達点評価を通底テーマとしております。ご一読下さい。
さて昨年末の政治トピックスの一つは「桜を見る会」を巡る税金の使い道、名簿データの駆け足廃棄(来年の招待者選定の重複チェックに要ったハズ)、そしていつも見る政府・中央官僚の答弁(記録がない・記憶にない)の問題でした。政府は声高に「行政の見える化」を唱え、地方に強要してきたのに自身はこの体たらくです。およそ企業や団体ならガバナンスとして資料を数年間は保管し、不測の事態時の点検に活用するでしょう。自己検証も説明責任も果たさず、こそこそ生き延びている“最長”長期政権とは何なのでしょう? 事の本質は税金の公正・透明な使い道と公文書保存や管理・公開のあり方という、民主主義の成熟度の根幹に係わる問題です。公文書は一定期間保管して後開示し、自らを歴史的検証に委ねようという覚悟も度量も持ちあわせない現今の政治家・高級官僚たちで残念です。
医療界での大きな話題は昨年秋の「公立・公的病院再編統合」名指し発表でした。地域住民や自治体は驚き、反対・撤回要求の声を上げました。それも道理で、早くも医師引き上げや赴任拒否という実害が出ています。急性期医療には対応不十分でも特別の医療を展開して地域や全国から患者を集めている、なくてはならない病院も、名指しされればダメ病院と思われかねません。本当にダメなら中に入ってきちっと改善を指導するのが厚労省の仕事でしょう。財務省目線で病院名だけの公表には悪意さえ感じます。現に“お詫び”行脚でも名指しの撤回は言わず、次は民間病院だと息巻いています。国家財政の逼迫を理由にするなら、税金の使い道にも厳格に臨むべきです。会計検査院が1000億円の税金のムダ使いを摘発しましたが、氷山の一角と思われます。景気対策「予算+補正予算」13兆円の全てに本当に実効性があるのか? 徹底的に個々の案件を微細点検して厳しくそぎ落とし、その分少しは医療充実にも回すべきでしょう。また巨大企業が海外子会社を利用したり、投資を繰り返して赤字を造り出し、法人税逃れをしている手法も問題にすべきです。
……正月早々の初夢は悪夢に終わってしまったようです。否、これは夢ではない現実だと気が付けば、公正・公平・透明・民主的な政治と医療政策を求めて何とかせねばとまた活動の意欲も湧いてきました。どうか皆様、今後とも協会活動にご理解とご支援・ご指導のほどを賜りますよう宜しくお願いいたします。そして本年が皆様方にとって健康で明るさの増す良い年となりますように祈念して、新年のあいさつとさせていただきます。