協会は、2月の京都市長選挙にあたり、協会の「基本要望」を立候補予定者の門川大作氏、村山祥栄氏、福山和人氏に12月3日付で送付。また、協会の個別要望に対する考え方を聞いた。以下に基本要望を掲載する。アンケート結果は3面掲載。
基本要望
「福祉の京都」 の伝統に立ち返った政策を求めます
京都市は平安京から明治政府に至るまで、都の置かれた文化・商工都市であり、世界有数の文化財を有する都市です。戦時中は西陣、馬町に空襲を受け、甚大な被害を受けましたが、戦後再建にあたっては戦禍を免れたとして他都市のような「戦災都市」の指定を受けることなく、国の財政支援が不十分な中での再出発を余儀なくされました。
しかし京都市は文化財を活用した観光、西陣織・友禅染を代表とした伝統産業、そして集積する大学といった、独自の条件を活かしての経済発展を遂げてきました。
一方、市民の所得が相対的に低く、他都市に比べ一人当たりの市民税収が少ない京都市は、常に厳しい財政運営を迫られてきたことも事実です。1970年代には第一次オイルショックによる急激なインフレの打撃を受け、市財政が赤字に転落しました。
しかし同じ70年代、京都市社会福祉審議会が「市民の健康と福祉に関する総合政策体系の在り方」(1976年)を答申、「福祉の京都モデル」を打ち出すと京都市は全国に先駆け、身体障害者リハビリテーションセンターや中央老人福祉センターを開設、「福祉の風土づくり」を進めました。これは注目に値する史実です。
当時の京都市社会福祉審議会の文書を読むと、それは高潔な姿勢・優れた理念に裏打ちされた政策であったことが伺えます。例えば、寝たきり高齢者対策として「地域看護サービス」を提案した「当面する老人福祉対策とそのあり方について」(1976年11月)には、「地域看護サービスと関連施策の強化を市の責任において実施する必要がある。…国の施策の不備・欠陥を市民福祉の確保や市民自治を軸とする自治体の責任として充実する…」と同時に、「このサービスの開始は自治体主導により国の施策の不備・欠陥に対する指摘・政策変革をもとめる」意義があると述べているのです。
地域住民にもっとも身近な行政として、必要なサービスを自ら創設し、それを契機に国政策を動かす意気込みは、まさに本来の地方自治体の姿ではないでしょうか。
今日、残念なことに京都市政にそうした姿勢を見ることはほとんどありません。この数年に限っても、行政区保健所は廃止され、地域密着で住民の保健衛生を支える仕組みを縮小しました。京都市身体障害者リハビリテーションセンター附属病院を、多くの障害のある人たちの悲痛な怒りの声を無視して廃止しました。直近では、市民に必要な介護サービスを届けるべく、重要な役割を果たしてきた介護認定給付業務を担う嘱託職員の雇止め、企業委託を強行しようとしています。
私たちは京都市の今日の姿を、仕方のないものとして受け入れたくはありません。
新たな市長が「福祉の京都」の伝統に立ち返り、住民の生命と健康を守る保健医療・福祉施策を再建されるよう、心から要望するものです。
2019年12月3日
京都府保険医協会
理事長 鈴木 卓