医界寸評  PDF

 12月4日、アフガニスタンの地でペシャワール会の現地代表、中村哲医師が銃撃され命を落とした。中村氏には、第66回定期総会で「アフガニスタンに命の水を―国際医療協力の30年」という講演をしていただいた▼アフガニスタンの住民の命は医療だけでは守れない。飢えや渇きは薬では治せない。こう考えた氏は、命を守る水の確保のため、井戸の再生の取り組みを始めた。また、「緑の大地計画」を立ち上げ、大河川から水を引く灌漑用水路建設を始め、荒廃した大地の再生に取り組んだ。なぜ、アフガニスタンでこのような取り組みができたか?▼あるインタビュー記事にこう語る。「僕は憲法9条なんて、特に意識したことはなかった。でもね、向こうに行って、9条がバックボーンとして僕らの活動を支えていてくれる、これが我々を守ってきてくれたんだな、という実感がありますよ。体で感じた想いですよ。政府側も反政府側も、タリバンだって我々には手を出さない。むしろ、守ってくれているんです。9条があるから、海外ではこれまで絶対に銃を撃たなかった日本。それが、本当の日本の強味なんですよ」▼そんな中村氏が凶弾に倒れた。今、アフガニスタンの人々は日本をどうみているのか。平和憲法を捨て、戦争ができる国に向かっているとみているのかもしれない。(治)

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