38年ぶりにローマ教皇が来日した。御年82歳にもかかわらず、滞在中は日本を東奔西走。各地で八つのメッセージを発信した。東京ドームでのミサには5万人の信者が来場。来日記念として記念メダルなどの教皇グッズの販売も行われ、すさまじい人気ぶりがうかがえた▼教皇の今回の訪問の目的は「すべての命を守るため」。長崎では核廃絶に向けての平和のメッセージ、広島では戦争での原子力使用を犯罪だと語った。東日本大震災の被害者との面会では、復興を勇気づけ、原発に対する懸念を表明した。そして若者たちとの「青年との集い」では、いじめや差別の問題について述べた▼特に印象深かったのが、世界中で社会問題化している孤独、現代人の「心の貧困」を語り、教皇は「心のゾンビ化」と表現した。日本は、「国が貧しい人々の面倒を見るべき」と考える人、ボランティアや寄付をする人、人助けをする人の比率が、他国に比べて極端に少ない。「世界一他人に冷たい国」ということだと指摘。日本では孤高への憧れや自己責任といった論調が根深く、それが引きこもりや孤独死、犯罪などの社会問題に直結していると警鐘を鳴らした▼今の日本は自己責任論が蔓延している。それは医療も例外ではない。今こそ、ローマ教皇のメッセージに耳を傾けるときではないか。(治)
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