【再掲】半数が社会的⽀援の必要な患者に直⾯  PDF

地区懇アンケート 現場での対応浮き彫りに

協会は2018年11月から19年4月にかけて「社会的支援を必要とする患者の事例」について会員アンケートを行った。各地区医師会との懇談にあわせて全会員2331人を対象にし、回答は293人(13%)であった。

独居・老老介護・DV・・・・

社会的支援が必要と考えられる患者さんに接した経験が最近あるかについては、「ある」が147、「ない」が146でほぼ同数の結果であった(図1)。「ある」と答えた方のうち、122人が実例を記載。複数事例や複合事例があるが、大まかな分類をすると、「独居や老老介護による困難」が最も多く51件、続いて「DV、虐待、ネグレクト」28件、「経済的困難」27件、「認知症による困難」25件、「精神障害」15件、「病気の困難」15件、「発達障害」11件、「介護問題」5件、「不登校、育児問題」4件などであった。その実例のいち部を表(P15)に記載したが、開業医が日常の診断で気づき、奮闘するさまを垣間見ることができる。

患者の背景を窺うことから

「ある」と答えた方に、この1年間の実感を答え
てもらったところ、「一定数は常にある」が61%、「増えている」が37%、「減ってきている」はゼロだった(図2)。
さらに、「ある」と答えた方に、なぜ分かったかを複数回答できいたところ、「ようすをみてわかった」63%、「本人から相談された」30%、「周囲からきいた」21%、「その他」14%(図3)。「その他」の内訳は、▽公的機関からの相談▽家族・施設からの相談▽ケースワーカーの紹介▽民生委員や地域包括・市の福祉課からの紹介▽地域包括支援センターから相談▽転院時情報で共有―。

適切な支援機関につなぐ

当該患者についてどこかに相談するなど、つないだ先を複数回答できいたところ、「介護事業所もしくはケアマネジャー」が41%、「地域包括支援センター」が40%、「市役所等」が35%、「どこにもつないでいない」も12%あった。以下、「社会福祉協議会」「地域障害者生活支援センター」「保健所」「児童相談所」「地域の民生委員・児童委員」の順(図4)。その他では、法テラス、病院MSW、京都性暴力被害者ワンストップ相談支援センター、京都市外国人高齢者支援ネットワーク、寄り添い支援総合サポートセンター(京丹後市)。小児の発達障害等では療育施設、教育機関(学校・教育委員会)、相談支援事業所があげられている。

孤独死とも関わり

独居の高齢者が増加して、孤独死も増えているといわれていることについて、医師として孤独死に最近関わったことがあるかという質問には、「ない」が83%、「ある」が16%。そのうち多い方で50件、25件、10件という方もみられたが、ほとんどは1〜2件であった。

「相談どこに?」

要望等には44人から意見が寄せられた。「事例に遭遇した場合、どこに相談したらいいのか」「気づいていないだけかもしれない」といった意見が最も多く、次に「深入りできない」といったものや、役所の対応への不満、ケアマネへの不信、患者・家族の非協力についての意見があった。具体的対応についても、地域での声掛けや見廻り隊などの活動や勉強会、キーパーソンの育成など、「サポートが入ると驚くほど生活が安定する場合が多い」「社会的支援が必要な人ほど、進行・末期がんで発見されることが多く、検診などで役所が定期的に把握する必要」といった意見があった。

潜在化したニーズを掴む

こうした背景について、日本学術会議の提言「社会的つながりが弱い人への支援のあり方について(2018年9月)」によると、「家族、職場、地域の社会構造の変化によってもたらされており、今後ますます深刻化する」とし、「本人の自助努力でかいけつすることは困難であり、社会の責任において取り組む課題である」とする。また、設置制度から利用契約制度への転換により、「行政の責任が福祉サービスの提供基盤の整備に留まり、どのように福祉サービスを利用して問題を解決するかは当事者に委ねられ」たが、「社会的つながりの弱い人の多くは自尊感情が低下し、自ら主体的にサービスをりようして問題を解決することができない」場合もあるため、「行政や福祉専門職の積極的な関与が必要」だとする。さらに、「社会福祉の制度利用を、個人の意欲の欠如や怠惰など道徳的な問題とみなす社会的な風潮がある中では、当事者は声をあげにくい状況に置かれ」、ニーズを掴むこと自体に困難が伴うとされる。今調査は、その潜在化したニーズを開業医が日常診療の中において掴み、適切な相談・支援機関につなぐ一端を担っているという現状が浮き彫りにされたといえるだろう。

なお、地区ごとの回答率は、与謝・北丹が34%と最も高く、舞鶴27%、下東25%、綾部24%、福知山と相楽が20%、宇治久世、亀岡・船井、左京、右京が13%、伏見、中西が12%、中東が11%、下西、綴喜10%、乙訓、西京、山科が9%、北・上東・西陣7%、東山5%と続く。所属別では、診療所が90%、病院が9%、保健所0.3%であった。

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