続 知っておきたい医院のための雇用管理 1  PDF

社会保険労務士 桂 好志郎

年5日間の年次有給休暇の取得(19年4月から医院に義務づけ)

 仕事を休んでも賃金が支払われる年次有給休暇(年休)。年休は正職員、非正職員にかかわらず同じ医院に6カ月勤めると与えられることが法律で決まっています。
 付与日数は働く期間が長くなると増え、正職員では勤続6年6カ月以上となると最大の年20日になります。(表1・2)
 ◇年休消化5日未満は罰金
 19年4月から、年10日以上の年休が付与される職員(監理管督者を含む)に、年5日間については年休を取得させることが義務づけられました。達成できなければ、職員1人あたり最大30万円の罰金が医院に科されます。
 ◇取得状況を把握する管理簿作成を義務化
 年次有給休暇の取得状況を把握することが必要となるため、職員ごとに年次有給休暇の管理簿の作成が省令で義務付けられています。管理簿には、職員が年次有給休暇を取得した時季、日数および基準日を定めるとし、使用者に3年間の保存義務が課されます。
 管理簿の様式は任意となっています。
 ◇年次有給休暇制度は
 毎年職員に有給で一定日数の休暇を与えることによって、職員が安心して休養をとり、心身の疲労を回復させることを目的とし、働きがいのある質の高い労働の実現へとつながるものであり、労働時間や休日などとともに重要な労働条件の一つとなっています。
 年次有給休暇を取り残す理由について尋ねた調査によると
 ①病気や急な用事のために残しておく必要があるから
 ②休むと職場の他の人に迷惑になるから
 ③仕事量が多すぎて休んでいる余裕がないから
 ④休みの間仕事を引き継いでくれる人がいないから
 ⑤職場の周囲の人が取らないので年休が取りにくいから
 ⑥上司がいい顔をしないから
 等が多く占めています。(独立行政法人労働政策研究・研修機構「年次有給休暇の取得に関する調査より」)
 病気などの急な用事に対する備えの他は、職場の雰囲気や仕事量、代替要員など、いずれも勤め先の要因によって生じている理由といえます。
 ◇年次有給休暇を取得できるシステムを
 ①年次有給休暇の取得を前提とした業務体制の整備
 業務に支障を与えることが分かっていれば、なかなか休暇の請求はできません。職員の多能化、労働能率の向上、パート職員の確保等で、休暇取得者の業務をカバーできるよう体制を整備することです。
 ②事業の正常な運営の妨げにならないように
 使用者には事業の正常な運営を妨げる場合は、時季変更権の行使が認められていますが、年次有給休暇の権利の行使と事業運営との積極的な調整を普段から図っておきたいものです。年・月・週単位で比較的繁忙期になるのはどの時期か説明を行っておくこと。
 また請求するのはいつまでなのか、職員全員で適切な方法と時期を確認しておくことがトラブルなくスムーズな運営のためにも必要です。
 ③個人別年次有給休暇取得計画表の作成を
 各人の年次有給休暇の取得希望時期を聴取し取得時期の調整、労使協定による年次有給休暇の計画的付与制度の活用提案など可能な限り計画的に取り組むことです。
 ④その他の休暇取得促進策
 業務上不都合のない職場では、1日単位の取得の阻害とならない範囲で半日単位での年次有給休暇の利用、やむを得ず取り残した年次有給休暇についての検討、誕生日等の記念日前後に取得する制度の導入など医院の実態や職員のニーズに応じてさまざまな措置を講じたいものです。

◇労働基準法改正 施行期日2019年4月1日
(改正前)
労働者が自ら申し出なければ年休を取得できませんでした。

①労働者が使用者に取得希望時季を申出
例「○月×日に休みます」

②○月×日に年休が成立

(改正後)
使用者が労働者の希望を聴き、希望を踏まえて時季を指定。年5日は取得していただきます。

①使用者が労働者に取得時季の希望を聴取

②労働者の希望を踏まえ使用者が取得時季を指定
 例「○月×日に休んでください」

③○月×日に年休が成立

労働者
使用者
労働者
使用者

厚労省のリーフレットより

表1 週所定労働日数が5日以上又は週所定労働時間数が30時間以上の職員

勤続年数 6カ月 1年6カ月 2年6カ月 3年6カ月 4年6カ月 5年6カ月 6年6カ月以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

表2 週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間数が30時間未満の職員

週所定労働日数 1年間の所定労働日数※ 雇い入れの日から起算した継続勤務期間
6カ月 1年6カ月 2年6カ月 3年6カ月 4年6カ月 5年6カ月 6年6カ月以上
4日 169日~216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121日~168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73日~120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48日~72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

※週以外の期間によって労働日数が定められている場合

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