社保研レポート 妊婦の診療で気を付けたいこと― 薬剤の使用を中心に ―  PDF

第666回社会保険研究会
講師:国立成育医療研究センター
   周産期・母性診療センター 主任副センター長(母性内科)
   妊娠と薬情報センター センター長 村島 温子 氏

 協会は、「妊婦の診療で気を付けたいこと―薬剤の使用を中心に―」のテーマで、第666回社会保険研究会を10月5日に開催。国立成育医療研究センターの周産期・母性診療センター主任副センター長(母性内科)で、妊娠と薬情報センター長の村島温子氏を講師に、話を聞いた。今回から近隣協会にも開催の案内を送り、参加者は49人(うち京都協会36人・京都歯科協会7人・滋賀協会6人)となった。質疑応答も活発に行われた。
 村島氏はまず、母性内科は妊娠を内科の立場でサポートする科であるとし、「慢性疾患患者の治療は、QOLを向上させ健常な人と同じような生活を送れるようにすることが究極の目標であり、学校に行ける、就職もできる、そうすれば結婚もできるし、赤ちゃんもほしくなるだろう。その際にサポートをしたいという思いからこの職を務めている」と語った。
 妊娠中に薬を使用するリスクについては、流産・奇形の自然発生率が15%・3%とされる一方で、薬が原因と考えられる奇形は1%にも満たないとされることから、「薬を飲んでいない人とリスクは変わらない」と述べた。
 一方で、リスクに関する統計的有意差がなく「リスクがあるとは言えない」という1000例ほどの疫学研究があれば「安全」な薬として考えられるが、妊婦・授乳婦に対する新薬治験はできない。このことから、疫学研究が少なく、エビデンスが得にくいため、添付文書の妊婦禁忌の記載を外すことは難航しているとした。
 また、催奇形性のある薬剤を飲んでいても100%奇形が出現するというわけではないため、リスクやベネフィットまで考えた上で投与・中止を検討する時代になっていると述べた。
 授乳については、かつては多くの薬が「乳汁中へ移行するので投与を避け」と添付文書に書かれていたが、現在では抗がん剤などの例外を除き、「治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討する」となっており、母乳を捨てるなどの指示はする必要がないと述べた。また、生物製剤については高分子蛋白のため、母乳に混ざっても赤ちゃんの体内で消化され、効果を失うとした。
 当日の模様は、協会ホームページにて動画配信および当日配布資料の掲載を予定している。ご参加いただけなかった場合は是非ご覧いただきたい。
 (ホームページへのログイン方法は本号1面の下部欄外をご確認下さい)

ページの先頭へ