核製造企業への投融資止めよ 京都開催の反核医師つどいで訴え  PDF

 第30回反核医師のつどいが9月14・15日の両日、メルパルク京都において全国から市民も含め270人の参加で開催された。「核兵器も原発もイカン(ICAN)」をスローガンに、シンポジウムや講演を行い、古都京都から核兵器廃絶と脱原発を訴えるアピールを採択した。京都での開催は12年ぶり3回目となり、つどいには日本医師会、広島市、長崎市が後援した。

核廃絶へ誰もができること

 今回のメイン企画として、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)が国際的に展開している世界の銀行・金融機関に核兵器製造企業への投融資を中止させるプロジェクト“ドント・バンク・オン・ザ・ボム”を日本でも本格的に展開する契機とすべく特別シンポジウムを開催。オランダのNGO「PAX」の核軍縮プログラム・マネジャーでICANの国際運営委員でもあるスージー・スナイダー氏と、中央大学の目加田説子教授が講演した。
 スナイダー氏は、核兵器製造企業への金融機関の融資を止めさせるプロジェクトは、一般市民と金融セクターの両方を核廃絶のアプローチに関与させる手段を提供するものであり、「顧客であるあなたが、銀行方針を変える力を持つ」のだと訴えた。
 目加田氏は、クラスター爆弾製造企業への投融資を止めさせる取り組みの経験から、自分のお金がどう使われるのか、預金者の意識を変えることの重要性を強調。世界的に広まっているESG(環境・社会・ガバナンス)の考え方が、核兵器にも適用できると訴えた。
 さらに反核医師の会として、国内の主要金融機関20社を対象にアンケートを実施した結果を、代表世話人の原和人氏が報告。期限までに回答したのは3社で、このうち2社はPAXの調査(17年1月~19年1月、国内8社が該当)で取引が指摘されている。いずれも核兵器製造事業への資金提供は行っていないと回答しているが、問われているのは企業そのものへの資金提供だとした。

「非核兵器地帯」という道

 「核兵器禁止条約とトランプ政権の核政策」について講演した大阪女学院大教授の黒澤満氏は、条約により核兵器は人類の絶滅をもたらしうるものだとの「悪の烙印」を押すことが核廃絶に向けて重要だと強調。核兵器の増強および使用可能性の拡大を主張する「核態勢見直し(NPR)」報告書、宇宙を含む防衛を計画する「ミサイル防衛見直し」報告書、そして中距離核戦略(INF)条約からの離脱など米政権の国際協調主義の否定が甚だしく、米国第一主義、法の支配ではなく力の支配の政策が行われている。その結果、他国も自国中心主義になり国家間の対立がより先鋭化していると話した。
 長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)の中村桂子准教授は、「核兵器のない世界」実現の障壁となる「核抑止」論について、実証できない「神話」に過ぎず、「使用」を前提とした脅しは道義的に許されないと批判。現実的な解決策として「北東アジア非核兵器地帯」の設立を提唱した。「非核兵器地帯」は世界に七つあり、朝鮮半島と日本を含む北東アジアに設置することで、核の傘に頼らずとも地域の平和と安全を守ることは十分に可能だと説いた。

“脆過ぎる”原発の耐震基準

 2014年に大飯原発3、4号機の運転差し止め判決を下した元福井地裁裁判長の樋口英明氏は、多くの裁判官が正当な判断ができない理由として、①極端な権威主義②頑迷な先例主義③リアリティの欠如④科学者妄信主義―にあると説明。原発の耐震基準がハウスメーカーのそれよりもはるかに低く、“普通の地震”で超えてしまうようなものであることから、「死に至る病を止めないでどうする」と、判決を出した理由を明かした。
 若狭原発の危険性について報告した福井県の医師・平野治和氏は、テロに無防備であること、福島レベル以下でも琵琶湖は汚染されること、安全神話に基づく机上の避難計画では全く対応できないことの危険性を指摘。これらを共有することで原発ゼロに向けた団結行動を訴えた。
 また、活動報告を行った京都「被爆2世・3世の会」世話人の守田敏也氏は、国の公式見解では被爆二世への健康被害は否定されているが、独自に行った健康調査では病気に苦しんでいる実態があり、「子どもたちの健康を守ることにつなげたい」と述べた。
 なお、つどいの実行委員会は近畿の保険医協会・反核医師の会・民医連で担い、実行委員長を務めた飯田哲夫氏が代表して開会あいさつを行った。また、社会的関心の高さから京都・朝日・毎日・東京各新聞社が報道した。

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