厚生労働省の官僚は本気で偏在対策をする気があるのか  PDF

 厚生労働省の地域医療構想に関するワーキンググループが、公立・公的医療機関等の約3割に当たる424病院が再編統合の対象だとして病院名を公表した。これらの病院は1年以内に2025年の地域医療構想を踏まえた具体的対応方針の再検証を要請されることになる。
 京都府内は4病院(市立福知山市民病院大江分院、舞鶴赤十字病院、国保京丹波町病院、独立行政法人国立病院機構宇多野病院)が対象となった。自治体、当該病院、地域住民や患者からは批判の声が一斉に上がっていることを京都新聞が詳しく報じている。
 京都府は地域包括ケア構想で定めた2025年の病床数が2万9957床であり、18年度よりも267床増やす計画だ。これを実現するために、各二次医療圏の地域医療構想調整会議で議論が進められてきた。これに対して国が「過剰な病床を削減せよ」と横やりを入れた形である。京都府は議会で「遺憾だ」「国に対してものを言っていきたい」と表明している。
 今年4月には改正された医療法に基づいて京都府地域医療対策協議会で府内の医師不足・偏在問題に対応するための議論が始まったばかりである。京都府保険医協会は医師偏在対策には自治体の公的支援が必要であるとし、公立・公的病院などが積極的な役割を担える条件整備を主張してきた。今回の病院再編統合は真逆の政策である。医師不足・医師偏在にも拍車がかかる恐れがある。
 今回打ち出された公立・公的病院の再編策には三つの大きな問題を指摘しておきたい。
 第一に、地域の病床削減を強制し、医師偏在を加速し、地域住民が必要とする医療が提供できなくなることである。議論の経過を見れば、これが民間医療機関へ波及することも十分予測される。
 第二に、政府・厚労省による地方自治への新たな介入である。地域医療構想や地域医療対策協議会など、あたかも都道府県の権限を強めるかのように見せかけながら、病床削減や医師配置を強制的手法でコントロールし、協議による結果だとして責任は取らない仕組みである。
 第三に、このワーキンググループの構成員に日本医師会や病院関係などの全国団体が名を連ねていることである。同会議で日本医師会の中川俊男副会長は「地域医療構想調整会議の機能を活性化させるため」だと述べているが、および腰というよりも当局への迎合と言われても仕方がない。
 協会は自治体をはじめ関係者と対話を重ねながら、こうした「無理を通せば道理が引っ込む」と言わんばかりの施策の撤回を求めていきたい。

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