初診時に胸部X線検査を行わなかったからと言って…
(60歳代前半女性)
〈事故の概要と経過〉
初診時には通常の感冒と診断された。当該患者は発熱37・3℃で咳等の上気道炎の症状が認められた。再診時に症状の改善がないので、患者側の希望を受けて胸部X線検査を行ったところ市中肺炎と診断。翌日になって別のA医療機関に入院となったが、死亡した。
患者側は、初診時に胸部X線検査を実施すべきであったのに、それを怠ったとして証拠保全を申し立てた。
医療機関側としては、初診時に熱発はあるがラ音は認めず、胸部X線検査の適応はないと判断した。この判断に過誤はないとして医療過誤を否定した。
紛争発生から解決まで約2年7カ月間要した。
〈問題点〉
胸部X線検査を積極的にしなければならない医学的根拠は認められなかった。また、仮に初診時に胸部X線検査を行い肺炎の確定診断ができていたとしても、患者の予後に明らかに良好な影響がみられ得たとは証明できないことから、医療過誤は問えなかった。
〈結果〉
医療機関側は客観的な調査をして、医療過誤がないことを確認の後に医事紛争に備えていたが、患者側は証拠保全の申し立て以降、一切クレームがなかったことから、立ち消え解決とみなされた。