主張 医療の損税解消には非課税還付が望ましい  PDF

 10月より、消費税が10%に引き上げられる。政府は、少子高齢化による社会保障費の増大に対応し、同時に財政の健全化をするためには消費税の引き上げは避けられないと主張し続けている。エコノミストの中には、消費税増税では、デフレ脱却が不可能になると警告する人もいる。実際に「アベノミクス」の最大目的の「デフレからの脱却」は、大規模な金融緩和政策によって効果が出始めていたが、2014年の消費税増税による消費低迷の結果、その後もデフレ状態が続いている。
 消費の落ち込みを防ごうと、20年6月までの期間限定で中小店でのキャッシュレス決済に対する還元策を打ち出している。この政策の先には、20年10月からのマイナンバーカードを活用したポイント還元制度を考えているようだ。本人認証やポイント管理などマイナンバーカードのシステムを利用するためにカードの取得が条件となるが、7月1日現在全人口に対する交付枚数の比率は13・5%にすぎず、カードを普及させたいという思惑が見えてくる。さらには、個人識別健康保険証番号をマイナンバーカードのICチップに入れようとする施策へと繋がっているように思える。これらのポイント還元を国費で賄えばその予算が必要となり、マイナンバーカードの普及にも巨額の経費が必要となる。
 医療機関では、医薬品や医療機器を仕入れる際に消費税を支払うが、社会保険等は非課税であるため、医療機関が負担せざるを得ない。このため、今回の増税時にも初再診料の診療報酬改定で対応することになっている。しかしこれまでの消費税対応は診療報酬のマイナス改定や算定項目の廃止、包括化などの影響で事実上消滅していると言われている。また、医療費に上乗せすると、逆に社会保障費が増大して財政を圧迫することになり、患者さんに対して消費税を課さないという本来の意味から外れることにもなる。
 協会は、損税解消に向けた施策は医療の非課税を維持する非課税還付が望ましと考えている。また、マイナンバーが社会保障の給付抑制や民間利用の拡大、医療情報や保険認証システムなどにつながらないよう声を上げ続けたい。

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