承継や閉院は余裕をもって計画を 医院承継講習会開く  PDF

 協会は、医院承継講習会を5月23日に開催。講師のひろせ税理士法人の副所長・認定登録医業経営コンサルタントの常田幸男氏が、近年の医療機関をとりまく背景、医院承継の注意点や手続き、閉院の留意点等を解説した。参加者は15人。

 常田氏ははじめに、開業医の高齢化、診療所数の増加、厚労省が示した「外来医師多数区域で開業する場合に、在宅や救急等の地域で不足する医療を担うことに合意する旨の記載欄を設ける方針」等を紹介。また、新規開業の診療所では外来患者数が伸び悩み、経営が軌道に乗るまでの期間が以前より長くなっていることから、既存の個人・法人診療所を承継したいニーズは高まっていると説明した。
 次に、承継のメリットを譲り渡す側と譲り受ける側に分けて説明。譲り渡す側は、地域医療の重責からの解放、患者の引き継ぎ、従業員の雇用継続、承継による対価の受け取り、テナントの現状回復義務やリース債務の引き継ぎ。譲り受ける側は、地域の信頼や患者、ベテラン従業員の引き継ぎ、開業準備期間の短縮、低コスト開業、銀行融資の交渉のしやすさを挙げた。
 承継時に問題となりやすいこととして、医師間でのカルテの記載方法や診療方針等の考え方の違いや従業員の有給休暇・昇給・お昼の電話当番等の過去からの労務問題の表面化があることを指摘した。労務問題が表面化した場合は良い機会と捉え、従業員との関係を改善すると良いとアドバイスした。
 行政手続きでは、個人診療所の場合は、診療所の廃止・開設、保険医療機関の廃止・指定、税務上の廃業・開業届等が必要になるのに対し、医療法人格の場合は管理者変更の手続きのみ行うと説明。また、管轄保健所によって指摘が異なることもあり、行政とは早い段階で事前協議するよう呼びかけた。
 承継は親子間や仲の良い先輩・後輩であれば上手くいくとイメージしがちであるが、現実はそうでもなく、親子間では口を出しすぎないこと、仲の良い後輩の場合でも第三者(例えば税理士)を仲介させる、第三者承継はお互いのメリットを尊重することが上手く承継するコツだと強調した。
 閉院時の確認事項として、麻薬在庫の処分と麻薬免許の廃止届、カルテの取扱い、医師賠償責任保険の延長補償を挙げた。閉院時には、テナントの現状回復義務、医療機器等のリース残金、院内物品の廃棄処分、従業員の退職金等に費用がかかるため、事前の見積りが重要だと説明。最後に、承継や閉院を考える際は、引退する数年前から計画的に準備をしてほしいと述べた。

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