日米貿易協定はTPPを超える脅威 内田聖子PARC共同代表が講演  PDF

 協会などでつくる「TPP反対京都ネット」は公開講演会を5月15日にハートピア京都で開催。トランプ米政権がせまる「日米貿易協定」について、「混迷する世界の貿易体制と、私たちへの脅威」というテーマで、内田聖子アジア太平洋資料センター(PARC)共同代表にきいた。60人が参加した。

 トランプ大統領による米国の通商交渉は、2017年1月のTPP離脱後、翌年にはNAFTAと韓米FTAの再交渉でTPPのひどい内容を組込み、その内容を土台に今年4月からの「日米貿易協定」に臨んでいる。USTR(合衆国通商代表部)公表の「交渉目的」には、TPPとほぼ同じ22項目が記されている。日本政府は自動車関税のみを回避するために、農産物や医療は譲るとみられ、よりひどいルールが圧しつけられることを懸念している。

食の安全ルールの後退が「拒絶できない」

 TPPは、遺伝子組み換えなどのバイオテクノロジーを使った農産品・魚・魚製品を貿易ルールの対象にすることを明記した初の貿易協定。新NAFTA協定ではその範囲をゲノム編集の食品に拡大している。TPPで一旦呑んでいるので、日米交渉で同様の要求があれば、拒絶できない。そうなると、輸入を拒否するには科学的な危険性を完全に証明しなければならず、グレーゾーンも含めた予防原則の措置ができなくなる。問題は、日本がそれを進んでやろうとしていること。他国からも心配の声があがるほど、日本での遺伝子組み換え作物の承認は世界で突出しており、しかもTPP批准後に急速に拡大している。18年1月時点で日本309、2位の米国197、EUは99でしかない。
 もう一点、日本政府の対応で問題なのは、ISDS(投資家と国家間の紛争処理)を問題視しないどころか「絶対必要」だと譲らないこと。30年間で800件を超えるISDSケースを受け、その仕組みの非民主性、不公平性、企業優位等の点が国際的に批判され、途上国・先進国政府、国際機関、専門家も問題視。ISDS離れが世界で進み、米国でさえNAFTA再交渉でISDS削除を提案している。いまのところ日欧EPAにISDSは入っていないが、もし入れば水道民営化の問題と絡んでEUに多く存在する「水メジャー」との間で大変なことになる可能性がある。

世界であがる「もうたくさんだ!」の声

 行き過ぎたグローバリゼーションによる、▽テロリズムの増加▽所得分配の歪み▽大企業の市場占有率の上昇▽労働分配率の低下▽地域間格差▽文化的断絶▽民主政治の空洞化▽国家主権の制約―などの矛盾に対し、世界で「Enough is Enough!!(もうたくさんだ!)」との声が高まっている。こうした歪みや矛盾に歯止めをかけて是正をしていこうという流れがあるが、日本は逆方向に走り続けている。世界の運動と連帯して運動をつくっていかねばならない。

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