改憲の発議と投票
今夏の参議院選を中心に選挙のある年は、護憲・改憲どちらにとっても大切な年であるので、これまで書いてきたこととの重複をおそれず、また少し現実的な話題にもふれようと思う。
「安倍」改憲の中心になる9条自衛隊追記は、決して現状追認にとどまるものでないことはすでに書いた。9条1項、2項はあっても自衛隊追記はその死文化を引き起こし、自衛隊は2項が禁止する軍隊であってはならないという歯止めがなくなり、「戦争をする軍隊」化の傾向が一層進む恐れがある。そして合憲となった自衛隊は、戦争法によって海外での武力行使が可能な自衛隊だ。そしてそれはまた9条だけでなく、人権の制限など憲法全体の変質や、さらには戦争や軍事のない日本社会の明るさにも陰りが出てくる恐れもある。
さて改憲への関門は発議と国民投票だが、発議には憲法審査会での改憲手続法改正審議と採決、憲法審査会へ改憲案提示と与党協議を経て、①衆議院への改憲原案提出、本会議質疑、憲法審査会への付託②衆議院憲法審査会での改憲原案審議と公聴会→過半数で可決③衆議院本会議で審議→3分の2で可決④参議院憲法審査会で審議・可決⑤参議院本会議で審議・可決―で改憲発議成立になり、30~180日後に国民投票が行われる(渡辺治氏(九条の会事務局、一橋大学名誉教授)講演会資料より)。
そして改憲最後の関門、国民投票の問題点は、①マスコミの有料広告規制がないこと。資金力のある側(最も資金力のあるのは政権)が有利②最低投票率の規制がない。投票率が低い場合、憲法が求める「国民の過半数」が賛成したか疑問。たとえば投票率が30%だった場合、国民の15%の賛成で承認になる③憲法改正に対する賛成投票の数が有効投票数の過半数(有権者の過半数ではない)を超えた場合に国民の承認があったとすること。事の重大性を考えると、賛成数は全有権者の過半数とするのが望ましい。
このように国民投票は改憲に有利になる恐れがあるので、護憲運動にとっては、改憲発議阻止が重要と思われる。
(政策部会・飯田哲夫)