知らなかったでは済みません
院内の情報伝達は確実に!
(70歳代前半女性)
〈事故の概要と経過〉
歩行中転倒して右手をついた患者が痛みで当該医療機関を受診。右第5基節骨基部骨折と診断された。手術は、キルシュナーワイヤー2本で固定の上、環指とともに2本ストラップ固定し、アルフェンス外固定とした。その後に内部固定ワイヤーの除去術を施行して、柔道整復師が右第5指基節骨骨折のリハビリを開始した。第4指の拘縮も認められたため、医師は第4・5指のROM―EX(可動域改善療法)をマイルドにするようにと指示したが、右第4指末節骨にマレット指骨折が生じた。なお、柔道整復師は患者にリウマチや骨粗鬆症があることを知らなかった。骨折が明白となったのは整形外科受診時で、その日からマレット装具で固定した。後遺症として、右環指および右小指のDIP・PIPの拘縮が認められた。右環指のDIP屈曲拘縮角度は約40度であった。
患者は、右環指および右小指のDIP・PIPの拘縮や疼痛があり、仕事や生活に支障を来たしているとの苦情を医療機関に訴えた。
医療機関は、当該柔道整復師がリハビリで力を入れ過ぎたことを認めた。また、リハビリ中に骨折したことは明白な事実として、不可抗力性もあるとしながらも過誤を認めた。
紛争発生から解決まで約3カ月間要した。
〈問題点〉
患者の原疾患としてリウマチ、骨粗鬆症があったにもかかわらず、その患者情報が医療スタッフに伝わっていなかった。その結果、患者の骨折につながっており、院内の情報伝達の不備が問題である。
ただし、賠償対象となるのは右環指DIP関節のみで、他の関節および小指は関係ない。
〈結果〉
医療機関側は過誤を認めて賠償金を支払い示談した。