京都市地域リハビリテーション推進センター(以下、市リハセン)、京都市児童福祉センター、京都市こころの健康増進センターの3施設の一体化整備が着々と進んでいる。市は1月21日より、「新築工事設計業務委託」に係る公募型プロポーザル募集を開始。御前松原付近(旧医師会館の西側。かつて〈こころ〉と〈衛生環境研究所〉のあった場所)への一体化施設建設が設計段階に入ろうとしている。協会も参加する京都市3施設の合築方針を考える実行委員会(以下、実行委員会)と京都のリハビリを考える会(以下、考える会)が新たな提言書をまとめ、1月28日に合同で市当局へ提出し、懇談の機会を持った。
懇談には協会・渡邉賢治副理事長、こどもたちの保育・療育をよくする会の市原氏、京都市職員労働組合民生支部の一条氏(看護師)、上垣氏(作業療法士)、永戸氏、京都社会保障推進協議会の南氏が出席した。
市側からは、障害保健福祉推進室の出口室長、大西社会参加推進課長、谷淵担当課長補佐、子ども若者はぐくみ局の寺山母子保健担当課長、児童福祉センターの神子田総務課長、地域リハビリテーション推進センターの田中相談課長、小下企画課長、福田支援施設課長、こころの健康増進センターの遠山次長が対応した。
児福は子どもたちの発達・権利保障の砦
実行委員会の提言は「児童福祉センターは児童福祉センターのままで」と題され、児福を子どもたちの発達・権利保障の砦として拡充・発展させるよう求め、あらためて3施設一体化に伴う不安点を建築、人的確保、京都市の基本姿勢の3点から指摘した。
その上で、発達検査の待機期間で療育につながるまで時間がかかっていること、背景にある営利産業参入を伴う療育事業所数の増加、国制度の変更に伴う「京都方式」(療育につなぐ際には必ず児童福祉センターの発達相談所が関与する仕組み)の見直し強いられていることに伴う、療育の質の確保が課題となっていると整理。それを踏まえて次の4点を提案した。①児童福祉センターの専門職が保健福祉センターに出向き、発達検査を実施すること②現在、センターのケースワーカーが実施しているインテーク面接等を、各区役所の子育て相談担当の保健師が実施すること③ワンストップでの療育手帳取得を実現すること④療育の質保障としての新たな京都方式。
加えて以上を実現するためには、全区に設置された子どもはぐくみ室と児童福祉センターの連携が必要であり、そのためにも事務職・専門職とともに大幅な人員増が必要だと指摘した。
提言を受け、市当局は今後の施設一体化にあたって参考にさせていただきたいとコメントした。参加者は公募型プロポーザル募集要綱における「設計業務委託仕様書」には、発達相談課の部屋数増が記されているが、それに伴って心理職等を増員するかと質問。市側はいまだそうした個別具体的なことまで決めているわけではない、とコメント。その上で、今後の具体設計にあたっては現場職員や周辺施設の人たちの意見を聴く会議を設けるとコメントした。また発達検査等待機期間の解消は一体化を待つことなく、常々考えねばならない。現場の努力、工夫により、療育につながるまでの期間は2~3カ月へ短縮していることを紹介。センターとはぐくみ室との連携も十分考えると述べた。
市リハセン附属病院廃止は誤り
考える会の第3次となる提言は「京都市地域リハビリテーション推進センター機能拡充と自治体のリハビリテーション保障政策の重要性について」と題され、2015年3月の市リハセン附属病院廃止が政策判断の誤りであることをあらためて指摘する一方、市リハセンが担う地域リハビリテーション事業や高次脳機能障害支援事業の重要性を強調。その機能拡充のためにも、市リハセンへの病床機能の復活がセラピストの専門性担保の観点からも重要と述べた。一方、現在の国の診療報酬制度のもとでは高次脳機能障害の方たちだけではなく、すべての人がリハビリテーション保障の機会を制限されており、市はリハビリ保障のため病床を持つべきと求めた。
提言の説明に続き、参加者が相次いで発言。30年間、市リハセン附属病院で訓練を行ってきたセラピストから、病院廃止以降、デスクワークが増え、臨床の場がなく腕が落ちたと発言。他の参加者から病院廃止後も市にとどまって仕事をしてくれているベテラン専門職にそんなことを言わせる京都市でいいのかと怒りの声があがった。また、附属病院廃止後、府内でリハビリを受けることができず、岡山県に入院した事例や、廃止後一切の公的サービスと切れてしまった患者さんを診察した開業医の体験も紹介された。
市側は、セラピストの専門性の確保について病院がなくなった中でどうしていくか、という点では若い職員には施設での一定の臨床経験を積んでもらうなどしている。できることはやっていきたいとコメントした。