高齢化社会の問題として、フレイル(虚弱)、サルコペニア(筋量と筋力の低下)等が挙げられます。これに対して、ウオーキングやレジスタンス運動、適度の蛋白質摂取が勧められています。しかし現実問題として、年配の方はたいてい何となく家の中で過ごされています。
そこでお勧めしたいのが、家の中でできる筋力トレーニングです。とはいうものの、腕立てふせや腹筋運動は当然できません。ではどうすればいいのでしょうか…。昔、金属バネのエクスパンダーがありましたが、今はゴム製のストレッチャーがたいていの百円均一ショップで販売されています。これで上半身の筋力が、そして足にひっかけて引っ張れば下半身の筋力がアップします。関節も柔らかくなり、握力も強くなります。上半身の筋力増強により、転倒しかけても物につかまることができます。また、身体全体のバランスもよくなります。買物袋を持つ力がつき、足腰もしっかりしてくることにより、マーケットへ行く自信も生まれます。頑張ってトレーニングされた患者さんは生き生きとして明るくなり、外出の機会も増え、友人もできて認知症も軽減し、プラス回転です。診察の時、虚弱ぎみであったり、活気がない患者さんに実技を示してプレゼントしています。
写真の男性は89歳ですが、見事に引っ張っています。当初は家での生活でしたが、今はひとりでコンビニに行っておられます。また、97歳の女性は診察室のベッドを独力で上がり降りし、ベッド上でも臥位からスーッと起き上がれるようになりました。以前は介助が必要でした。本当にびっくりしました。このストレッチャーは、テレビを見ながら自分のペースで遊び感覚でできますので、ぜひお勧めします。
筋力アップした患者さんに、「オー、優等生。やった!」と言ってハイタッチしますと、ものすごく嬉しがられ、今までにない笑顔になられます。健康寿命の延長と、質の改善に役立つことと思います。
なお、「おばあちゃん、良かったね」ではなく、「〇〇さん、お見事」と名前を言うほうが、人格を認められたと喜ばれます。
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