協会も参加するTPP反対京都ネットは11月1日、学習会を開催。「日米FTA・トランプ貿易戦争の背景にあるもの」のテーマで真嶋良孝氏(農民連副会長)が講演した。
真嶋氏は、TPP11が12月30日に発効することとなり、日欧EPAの批准が今臨時国会にかけられる状況で、ともに重大な問題であるが、日米FTAに照準をあてて運動を集中すべきであると、その危険性を強調した。
9月の日米合意で交渉を進めるとしたものは、安倍政権がどう言い繕おうと日米FTAそのもの。日米FTAの影響は医療・食の安全など国民生活全体に及ぶ。特に危ないのは医薬品・医療の分野。TPP12での日米政府間交換書簡で薬価決定の「透明性」確保、日本の「将来の公的医療保険制度のあり方」協議を義務づけており、トランプ政権は日本の薬価見直しを市場開放の本丸と位置づけている。
一方で、中国に貿易戦争を仕掛けるトランプ大統領の狙いは、「アメリカ第一主義で国際ルールを書き換えること」。貿易戦争の動機である貿易赤字、製造業の衰退・空洞化、知的財産権の侵害、の3点セットは、アメリカの多国籍企業が米国市場向け生産拠点として中国を利用することで招いているとライトハイザー氏(米通商代表)が2010年に証言しており、原因を自認している。
グローバルルールのもとで中国が躍進し、デジタル化により先進国による技術独占ができなくなるなど、世界経済構造と多国籍企業体制が変化する中で、トランプ政権は中国の封じ込めとグローバルチェーンの寸断に乗り出した。この「中国からの撤退、アメリカへの回帰」の強要に、多国籍企業は一致して反対・抵抗を組織できていない。根源にあるのは、多国籍企業体制を根底から揺さぶっている資本主義の奥深い危機であり、トランプの暴走は問題の「表れ」にすぎず、問題の「原因」でないと英「フィナンシャル・タイムス」も評している。これはグローバリゼーションの「終わりの始まり」になりうる。
米国だけでなくヨーロッパでも広がる自由貿易・グローバル化ノーの世界的な流れの中で、これに逆らうように安倍首相は「自由貿易の旗手として立つ」と国連で演説し、時代錯誤ぶりを示した。
TPP反対の運動は、野党が一致して反対をかかげ、市民との共同集会が何度も繰り返されるなど、戦後史において空前の広がりをみせた。今臨時国会でも日米FTAをめぐって野党の追及意欲は強い。狙われているのは農業だけでなく国民生活と地域、日本の主権にかかわる広範な問題であることから国民的課題として連帯していくことが重要。TPPを上回る運動で、日米FTAを阻止しようと訴えた。
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