医療安全の担当をしていて「典型的な紛争ってどんなものがある?」と聞かれると、真っ先に思い浮かぶのが、高齢者の転倒・転落事故と、採血時の神経損傷の二つである。この2種類の事故、あるいは紛争にはいくつかの共通点がある。それらは不可抗力の要素が強いこと、因果関係がはっきりしていること、事故であっても必ずしも過誤とは判断されないこと等である▼医療過誤が認定されない場合は、当然ながら医師賠償責任保険金は適用されず、誠心誠意の説明をもってお金を支払わない解決を目指さなければならない。患者側からすれば実際に事故が起こっているのに何の賠償もないとは何たることだ! と怒りを露わにするのも一方で理解できる▼しかしながら、賠償する条件は事故の発生ではなく、その事故の発生原因が過誤と判断された時である。残酷かもしれないが、事故が起こっただけでは、患者側に金銭的補償は難しい▼協会の役割は、そのような大変な時に適切な助言をして、解決に寄与することにある。完全無欠とはとても言えないが、協会には60年近く医療安全対策を実施してきた歴史と経験がある。紛争解決のために、ずっと昔から担当理事者も事務局も懸命になっており、今も活動を続けていることだけは認識いただけると幸いである。(フーちゃん)
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