代議員月例アンケート 112  PDF

「地域別診療報酬」 について
実施日=2018年9月末~10月15日
対象者=代議員89人、回答数=41(回答率46%)

医療の平等原則奪うべきでない

 奈良県の荒井正吾知事は3月28日、高齢者の医療の確保に関する法律第14条「診療報酬の特例」の適用を打ち出した。奈良県医療費適正化計画に定めた医療費目標の達成が図れない場合に、国民健康保険の保険料水準引き上げを回避できる水準まで医療費を抑制できるよう、診療報酬を引き下げることを国に求めることを検討するというもの。
 診療報酬は、保険診療におけるあらゆる療養の給付に要する費用を定めた公定価格で全国一律に適用されるが、これを「他の都道府県の区域内における診療報酬と異なる定めをすることができる」とすることが「診療報酬の特例」。同法は2008年に施行されたが、活用に踏み切る都道府県はあらわれていない。
 全国知事会は、「その妥当性や医療費適正化に向けた実効性には疑問がある」として慎重姿勢を表明しているが、財務省は財政審建議で「第三期医療費適正化計画の達成に向けて速やかに活用できるように」と積極的な活用を促し、「骨太方針2018」も「具体的な活用策の在り方を検討する」と前のめりの姿勢だ。
 「いつでも・どこでも・だれでも」国民が等しく安心・安全の医療を受けられる国民皆保険制度を実現するために、診療報酬の地域差撤廃を実現してきた保険医運動の歴史がある。協会は、都道府県が国保都道府県化と地域医療構想によって医療費管理を担わされることになったことで、医療費抑制を重視する姿勢に傾くことを最も懸念してきた。地域別診療報酬の活用はそこに大きく踏み出すものであり、近畿の各協会とともに反対をしている。
9割が 「実施させるべきでない」
 奈良県が「地域別診療報酬」の検討を表明していることについての認知度は44%で、半分以上が「知らない」とした(図1)。
 「地域別診療報酬」についてどう考えるかについては、「実施させるべきでない」が88%と圧倒的だが、「実施しても構わない」が8%あった(図2)。
 前問で実施に否定的な理由(複数回答)で最も多かったのは、86%の「全国民が等しく医療を受ける権利を奪うべきでない」。次いで66%の「単価切り下げは医療水準の切り下げにつながる」、51%の「都道府県が医療費抑制の立場に立つべきでない」で、「隣の県のことであり、直接の影響が心配される」は29%だった(図3)。
 一方で、肯定的な理由では、「京都府も医療費を上げすぎないよう意識する必要あり」との記載があった。
 自由意見でも批判的意見ばかりが並んだ。この中から一部抜粋して掲載する。
 ▽「地域別診療報酬」などは医療全体をブラック職場にするもので言語道断▽医療費抑制の県で仕事したいという医師は減るであろうし、医療供給量の減少、医療水準低下が明白に見通せる。県民を犠牲にする政策と断言できる▽一つの県が異なることを施行すると良い方向にいくことがまずない▽現実問題としては困難で、実施までには至らないと思う。医療サービスの低下は県民の流出につながり、逆効果になるのではないか▽地域別にすることで医療供給の偏在が一層進行する。このような提案がでること自体が医療への無理解であり、憤りを感じる▽国民に差を生む診療報酬制度はふさわしくない―。

図1 奈良県の「地域別診療報酬」の提案について
図2 「地域別診療報酬」の提案をどう思うか
図3 「実施させるべきでない」理由は何か

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