京都市3施設合築問題とは何か  PDF

⾃らの「構造改⾰主体化」を強いる国政策に抵抗する⾃治体を求める

1.市リハセン附属病院廃止から3施設合築へ
 京都市は、京都市地域リハビリテーション推進センター(旧身体障害者リハビリテーションセンター)・京都市こころの健康増進センター・京都市児童福祉センターの公立3施設の合築に向けた取組を進めている。合築後施設の建設予定地は、かつて京都府保険医協会が入居していた京都府医師会館の跡地(現在は病院と京阪電鉄資本の有料老人ホームが建つ)に隣接する土地である。
 市が合築対象とする施設は、何れも独自の先進性と意義があるものばかりだ。
 もっとも歴史が古いのが児童福祉センターで1931年に前身の京都市児童院として設立。市リハセン(新名称は「京都市地域リハビリテーション推進センター」)が1978 年、こころの健康増進センターが1997 年に設立された。
 京都市が3施設合築方針を突如明らかにしたのは2014 年2月の京都市会である。
 市当局は「障害保健福祉施策の総合的な推進と児童福祉施策の充実・強化に向けた取組方向」を示し、15年3月末の市リハセン附属病院廃止後、年度内にこころの健康増進センターを市リハセン内に移転し、現こころの健康増進センターを除却。16 年から3施設合築の整備取り組み(調査→設計→工事)を開始するとした。既にこの方針に基づく事業は実行され、病院を廃止した市リハセンの空きスペースにこころの健康増進センターを移転(15 年9月)させた。今後の具体的取組内容については、実行委員会と市当
局との懇談に際し、「関係課の課長級職員によるプロジェクトチームによる検討」がなされていると説明されている。
 市会報告した「取組方向」で、市当局は、「各施策の『持続可能性』を確保しつつ、『公』に求められる役割」を果たすべく、「市の推進体制の再構築が急務」と述べ、(1)「障害保健福祉施策の総合的な推進」と(2)「児童福祉施策の充実・強化」の必要性に基づき、進めるべき施策として3施設合築を打ち出している。
 確かに、高次脳機能障害への対応強化(市リハセン・こころの健康増進センター)や児童虐待や発達障害等に係る相談体制の強化、自閉症児童等への支援の充実、一時保護所の受入れ枠拡充及び保護児童の処遇改善は必要であり、その限りにおいて、市の課題意識に異論はない。だが、その課題の解決に3施設合築は必要なのだろうか。
 協会はこの間、関係団体・個人とともに、この問題について取り組みを進めてきたが、その中でいくつもの疑問や指摘すべき事項が浮上してきた。
 それらはいずれも合築によって、むしろ障害のある人たちや子どもたちの医療・福祉保障の後退を予想させる。
 さらに、その背景には、国による障害者福祉施策転換や安倍政権の成長戦略があり、それに対する京都市の姿勢の問題があるようにも考えられる。
 本稿は京都市のすすめる3施設合築方針の背景問題を検討し、今後の政策提言に向けた議論への材料を提供する。

2.京都市は合築自体にこだわっているのか
 これまでの経過から、市リハセン附属病院廃止方針が、京都市の行財政改革(行政リストラ)の一環として発想され、そこから派生(あるいは「発展」)する形で今回の合築問題が浮上したことは疑いのない事実と考えられる。
 だが、京都市が当初から合築を意図していたのか、途中で思いついたのかは定かでない。しかし、市は3施設合築に強くこだわっているように見受けられる。
 協会も構成団体としてかかわっている「京都市3施設の合築方針を考える実行委員会」は、15 年8月10日に市当局に「要望と質問」を提出、直接懇談・要請した。この席上、実行委員会の投げかけた「そもそも、3施設合築方針は、誰がいつ決めた方針なのか」との質問に対し、市当局は「合築は正式な京都市の方針」であり、「行政の方針は議会の議決を必須とするものではない。議決はしていないが、京都市の方針として市会の教育福祉方針に報告している」との旨回答した。それでは議会に諮るべき内容、審議会に諮るべき内容、どこにも諮らなくても良い内容の判断基準は何かと問うと、要するに臨機応変に判断するのだと答えている。これに対し懇談参加者は、合築によって生じるであろう問題点を指摘した上で、「3施設合築方針自体の是非の段階から、市民の意見を聴いて再検討せよ」と要求したが、当局は決してそれを受け入れなかった。
 このやりとりから受ける印象は、まず3施設合築という方針だけが市サイドで決定事項とされ、その時点では具体的内容は考えられていなかったということである。しかし一方、合築という結論自体を取り下げるつもりはない(あるいは取り下げられない理由が何かあるのかもしれない)らしい。

3.児童福祉センターとは
 合築に伴い、3施設各々について危惧される問題があるのはもちろんだが、ここでは児童福祉センターをめぐる問題を取り上げる。
 まず、京都市児童福祉センターとはどのような施設なのかを俯瞰しておく(図表1)。
 児童福祉センターは①「相談機能」、②「検査・診断、療育(治療)機能」、③「障害福祉サービスの窓口機能」を有している。
 このうち①「相談機能」には3つの顔がある。
 ⅰ)知的障害者福祉法(第9条の6※必置義務)に基づく「知的障害者更生相談所」であり、「療育手帳の判定」「施設入所判定」「進路相談」「支援方針」「巡回相談・判定」「障害基礎年金診断」を業務とし、18 歳以上の知的障害のある方の相談に応じる。
 ⅱ)発達相談所であり、子どもたちの「発達相談や心身の障害相談に応じ、支援制度や施設利用の紹介、アドバイス」を行う。
 ⅲ)児童福祉法(第12 条※必置義務)に基づく「児童相談所」であり、子どもたちの「養護・虐待・非行・育成などの相談に応じ、関係機関との連絡調整等」を行う。
②の「検査・診断・療育」機能は、①のⅱ)発達相談所に位置付けられており、「診療療育課」として、
a.診療部門、b.療育部門がある。
a.診療部門は「診療所」を運営し、小児科・児童精神科・眼科・整形外科・耳鼻咽喉科に医師が配属され、「心や体の発達に不安がある場合の診察や検査を行い、必要に応じて治療」を行う。
b.療育部門は児童発達支援センター(「こぐま園」「うさぎ園」)及び総合療育事業(「カンガルー教室」「ライオン教室」「こうさぎ教室」)を運営し、「発達支援」を行う。
③の「障害福祉サービスの窓口機能」は、18歳未満の短期入所、日中一時支援、障害児支援(児童発達支援・放課後等デイサービス・障害児入所施設)の利用についての相談・受付・決定を行う。
 京都では特に、児童発達支援の利用調整については「児童福祉センター」で行うことを基本としており、これを「京都方式」という(後述)。以上のような機能はまさに「ワンストップ」と呼ぶにふさわしい。

4.児童福祉に対する理解
 実行委員会が開催してきたフォーラム(15 年2月、12月の2度にわたり開催。既報)や行政への要請行動(15 年8月開催。既報)を通じ、基本的な論点は整理されつつある。
 一つは発達障害に対する支援と「児童福祉」施策、そして「障害者福祉」施策の基本的な関係をどう考えるかである。
 懇談の席上、こどもたちの保育・療育を良くする会のメンバーが繰り返し指摘したのは、次の点だった。児童福祉センターの発達相談所に子どもを連れて訪れる親御さんは、障害受容が出来ている状況ではない。そうした保護者にとって、「3障害」で一括りにされた施設は敷居が高い。この指摘は、実際にわが子の発達に悩む親御さんやそれをサポートする専門職でなければ、ともすればピンとこないかもしれない。だが懇談席上、「京都市当局者も施設名称に障害という文字がつくか、あるいは施設の入口を分けるのかどうかも決まっておらず、今後の具体的な検討である。確かにナイーブな問題であり、それを無視して進めることは考えていない」との趣旨で回答し、極めてナイーブな問題だと認めている。
 二つめもそれに関連することだが、そもそも「児童福祉施策」を「障害」のキーワードで総合化するという発想自体の是非である。
 3施設合築のキーワードは結局のところ「障害」である。しかし、前述したように児童福祉センターには「児童相談所」機能がある。もしも児童福祉施策と障害者福祉施策を分別することが可能だとしても、児童相談所機能は障害者施策だとは一般的に考えて言えないのではないか? だからこそ、懇談席上で市当局は「今回の3施設合築方針は、『障害者保健福祉施策の総合的な推進』と『児童福祉施策の充実・強化』に向けた取組方向である。つまり、二つの方向性を踏まえた方針であり、児童福祉を障害福祉に突っ込むわけではない」と説明しているのだが、後付けの説明に思える。それは、「二つの方向性を踏まえて」一つの施設にする理由がまったく語られていないからだ。
 国制度のレベルで考えても、12 年4月1日以降は、従来「事業系」サービスは「障害者自立支援法(当時)」、「施設系」サービスは児童福祉法と根拠法が分けられていたものが児童福祉法に一本化され、「児童福祉」と「障害者福祉」の体系が敢えて別体系で組み立てられていることの意味はそれなりに根拠があるのではないか。
 国連子どもの権利条約の条項を引用しておく。

第23 条(抜粋)
 締約国は、精神的又は身体的な障害を有する児童が、その尊厳を確保し、自立を促進し及び社会への積極的な参加を容易にする条件の下で十分かつ相応な生活を享受すべきであることを認める。
1.締約国は、障害を有する児童が特別の養護についての権利を有することを認めるものとし、利用可能な手段の下で、申込みに応じた、かつ、当該児童の状況及び父母又は当該児童を養護している他の者の事情に適した援助を、これを受ける資格を有する児童及びこのような児童の養護について責任を有する者に与えることを奨励し、かつ、確保する。
2.障害を有する児童の特別な必要を認めて、2の規定に従って与えられる援助は、父母又は当該児童を養護している他の者の資力を考慮して可能な限り無償で与えられるものとし、かつ、障害を有する児童が可能な限り社会への統合及び個人の発達(文化的及び精神的な発達を含む。)を達成することに資する方法で当該児童が教育、訓練、保健サービス、リハビリテーション・サービス、雇用のための準備及びレクリエーションの機会を実質的に利用し及び享受することができるように行われるものとする。

 三つめに、京都市がそのような基本問題のところで疑問を抱かせる提案をしてしまったのは、政策決定プロセスにおいて、恐らく児童福祉センター等、市の公的施設に在籍する医師や専門職の意見・見解が踏まえられていないことに起因するのではないか。この点も懇談の際、実行委員会が強く追及したことだった。
 実行委員会からの、「京都市としてどんな議論をしたのか。市職員である医師をはじめとした専門職の意見を聴いて決めたのか」との問いに対し、市は「専門職からの意見は、現在設置しているプロジェクトチームに参加する課長を通じて聞き取りをすすめていく」と答えている。つまり、これからやる、ということだ。これに対し、実行委員会は「市の専門職の意見を聴くなら、3施設合築を打ち出す前にすべきことではないか」「発達相談に子どもを連れて行く親御さんのメンタリティのことは、何よりも優先し、最初に聞き、施策に反映せねばならなかったはずだ。政策決定プロセスがおかしい」と強く市を批判し、「3施設合築方針自体の是非の段階から、市民の意見を聴いて再検討せよ」と要求したが、市当局は「そこは立場が違う」との対応で、平行線に終わった。「立場が違う」という言葉で切って捨てられては困る話である。
 3施設合築という結論だけを先に考え、内容はこれから考えます、というのは誰がどう考えても順序がおかしい。だから、京都市が3施設合築に固執しているようにしか見えなくなる。そして、なぜそれに固執するのかということについて、様々に推論せざるを得なくさせるのである。

5.合築で児童福祉センターはどうなるか?
 なぜ、京都市は合築方針を持ち出してきたのか。
 二つの角度からの推論が成り立つ。
 一つは、国の新自由主義改革による国家形成と成長戦略との関係である。
 二つは、社会保障制度体系の変革と、とりわけ児童福祉センターの打開すべき現場の困難という事実である。

(1) 構造改革主体化する地方自治体

1)「典型」としての京都市
 京都市が11 月に公表した「はばたけ未来へ! 京プラン 後期実施計画(骨子)」※1 は、市の財政状況を次のように述べている。
 「本市財政は,市民 1 人当たりの市税収入が少なく財政基盤がぜい弱なうえ、地方交付税・臨時財政対策債が大幅に削減され、一般財源収入がピーク時から大幅に減少し、回復しない状況」
 「その一方で、社会福祉関連経費は高齢化等の進展と全国トップレベルの福祉、子育て支援等の維持・充実により、大幅に増加し、徹底した行財政改革を断行したうえでも、なお、公債償還基金の取崩しなどの特別の財源対策※2に依存せざるを得ない極めて厳しい状況」
 「今後についても、社会福祉関連経費の増加傾向が続くことは必至なうえ、投資的経費については、南部クリーンセンターや市庁舎をはじめとした公共施設の老朽化が進行し、これ以上の先送りが不可能な大規模改修や建替えの時期が集中する見込み」
 「加えて、東京オリンピック・パラリンピック(32年度)や関西ワールドマスターズゲームズ 2021(33年度)開催など国際的競技大会の決定や、国立京都国際会館多目的ホールの建設(30 年度供用開始予定)など、国内外から入洛者が更に増加する絶好の機会に際し、都市の魅力を高め、京都の発展につなげるための先行投資を集中的に実施する必要性が高まってい」る。
 「特別の財源対策はいつまでも続けられるものではなく、厳しい財政状況の中にあっても、将来にわたり福祉、子育て支援、教育や防災・老朽化対策、未来の京都への先行投資を推進するためには、行財政改革を更に推進し、特別の財源対策に頼らなくても必要な財源を賄える、持続可能な財政運営を確立することが欠かせ」ない。
 つまるところ、京都市が述べているのは、「京都市はお金がない(これは、市民が払ってくれる税金が安いからだ。
 国からの交付税等が減らされたからだ)」ということ。
 「お金がないのに社会福祉経費に金がかかりすぎる」ということ。その上、公共施設の老朽化には取り急ぎ対応が必要だということ。さらに、オリンピックなど国内外の人がお金を落としにきてくれるチャンスだから、そこへの先行投資をせねばならないということ。以上の状況から、「行財政改革をさらに推進」せねばならないという話に落とし込んでいる。
 その上で、2020 年までの財政運営目標として、「総人件費の削減」、「公共投資、市債残高の的確なコントロール」、「事業見直し等による財源確保」、「資産有効活用等による財源確保」を掲げている。
 そして、事業見直しでは「社会福祉関連経費、公営企業への繰出金などを含む消費的経費のすべての予算について、改革を徹底」すること。資産有効活用等では「施設の統廃合等に伴い、役割を終えた土地等の貸付や売却などを、引き続き進めるとともに、ネーミングライツや寄附など幅広く保有資産の有効活用を図り、財源を確保する」ということを表明し、3施設合築の根拠とも取れる内容となっている。ここには地方自治体の陥っている状況が典型的に表れている。
 自治体財政の危機は、京都市の指摘するとおり、「地方分権改革」(自公政権)、「地域主権改革」(民主党政権)による、義務付け・枠付けの見直しやひもつき補助金の一括交付金化等による歳入減が大きな原因の一つになっている。
 いずれにしても、税収の落ち込みは、自然な流れとして、自治体自らを歳出削減や歳入増のための「行財政改革」=自治体リストラ推進へ追い込んでしまうだろう。
 しかし、本当はその時にこそ、自治体の値打ちは問われる。
 流れに抵抗し、地方自治体の本旨を守り抜こうとするのか。
 流れにのって、無批判に「改革」を進めるのか。
 残念だが、典型的な後者が京都市の今の姿である。

2)成長戦略への「地方動員」
 「構造改革主体化」というのは、地方自治体が住民の生命や健康を守る主体ではなくなるということを指している。
 では、本来の地方自治体の本旨(第一条の二 地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする)を果たさずに、地方自治体は何をしろということになるのか。
 昨今、「地方創生」という言葉が濫用されている。安倍政権の下でにわかに登場してきたそれは、安倍成長戦略の必要性から提起された「成長戦略に地方を動員するための地方創生」である。
 安倍政権のすすめる地方創生戦略からみえてくるのは、「成長戦略実行部隊」としての自治体への仕立て直しである。「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」から読み取れるその本質は、政権のすすめる「経済・財政一体改革」で法人負担(大企業の負担)を軽減しながら、財政を再建し、なおかつ「経済成長」を追求する政策に、市町村レベルまで巻き込む戦略である。
 すなわち地方創生の背景にある国の課題意識は次の4点に収斂される。
①公共部門のリストラを市町村レベルまで進める必要があること
②人口減少社会で公共施設の老朽化・更新問題が重要課題になってきたこと
③東京圏の高齢者、単身者増加が社会保障負担増や介護人材の不足をもたらし、将来の経済成長にマイナスの影響を与えるため、東京圏の人口を減らし、地方への流れをつくる。その受け皿と仕掛けづくりが必要であること
④安倍政権のめざす「大国主義」国家の実現にとって、人口確保が必要であることその具体方針である「地方創生戦略」を実行することで、地方自治体は、「地域再編・集約化及び公共部門再編・集約化・民営化を推進することによって『安上がり』に東京圏等からの人口移動の受け皿をつくる」、規制緩和を中心にした成長戦略に沿って「アイデア競争」を産官学で進めさせ、観光やヘルスケア産業育成等を進めさせるといったねらいを達成するのである※3。
 こうした政策が、地方自治体の基本的な機能と役割に歪みを生じさせている。「地方分権」を旗印にした、国による自治体への支配が、各分野で強化されている。
3)市の政策が国のねらいと合致
 京都市が地方自治体として、自治体の構造改革主体化の流れに抵抗する姿勢を持っていたなら3施設合築方針は提案されなかったかもしれない。
 京都市は総務省の示した「公共施設等総合管理計画」策定作成指示(通知・総財務第75 号)に基づき、「京都市公共施設マネジメント基本方針」(2014年3月)をまとめている。その展開イメージでは、「見直すべき施設」と「維持すべき施設」の大別、「見直すべき施設」では、「保有量の見直し」を行い、将来は「保有量の最適化」として、「民営化・複合化・多機能化・廃止」を目指すことが示されている。廃止や合理化により、役割を終えた施設は「売却」されることになる。
 国の14 年度予算には、公共施設等の除却に対する地方債の特例措置が盛り込まれ、15 年度の地方財政計画では公共施設老朽化対策の推進が重視された。
 総務省は自治体の公共施設の大規模な集約化・縮減の枠組みづくりを進めており、これが地方創生政策と一体的に進められている※4。国家の富を生み出す自治体づくりの邪魔になる荷物はすべて棄て去れということであろう。
 こうした国の方針と、京都市の行財政改革の間には何の矛盾もない。むしろ、京都市方針の後押しを国がやっているかのような、「逆転現象」も起こっているのではないかと思わざるを得ない。
 医療・福祉分野に限っても、市リハセン附属病院廃止を筆頭に、京都市立看護短期大学の廃止(13 年)、京都市急病診療所の廃止(11 年)、洛西ふれあいの里保養研修センター(13 年)と公共施設の廃止を強行してきたのが京都市である。他にも、京都会館建替えをはじめネーミングライツ採用で、巨大企業の名称を市民共有財産である文化施設に冠している。
 京都市が、地方自治体の構造改革主体化の典型と断じざるを得ないのは、こうした経過を踏まえてのことである。

● ローカル・アベノミクスの実現
(まち・ひと・しごと創生基本方針 2015 2015 年6月30 日・閣議決定)
①「稼ぐ力」を引き出す(生産性の高い、活力に溢れた地域経済の構築)
②「地域の総合力」を引き出す(頑張る地域へのインセンティブ改革)
③「民の知見」を引き出す(民間の創意工夫・国家戦略特区の最大活用)

4)学校跡地活用と「かがやき」
 さて今回の合築問題も、今述べてきたことと無関係ではないとの仮説が成り立つ。
 ここで話が逸れるようだが、京都市の学校統廃合について述べておく。
 京都市は1987 年から小学校統廃合を推し進めてきた。
 京都市の小学校の成り立ちは他府県のそれとは違う意義を持っている。「明治維新後、都が東京へ移ることとなり、京の町は、深刻な危機を迎えました。
 京都の町衆は、京都の再興は人づくりにあると考え、早くも明治2年に町の区分であった番組を単位として、64 の小学校を創設しました」(「京都の小学校の歴史」市HP)。これらは「番組小学校」と呼ばれ、「わが国の近代的学校教育制度のさきがけとなった」(同前)のである。その「さきがけ」を次々に統廃合してきたことについて、門川京都市長は「京都市では、竈金の精神でつくられた地域立の学校は、昭和16 年まで地域の財産でした。勅令でもって京都市の財産になりました。そうした学校も含めて市民参加のもと、これまでから学校統廃合を徹底して実行してきました。この間、既に68 校が17 校に統合しました。」(中略)「この財政効果は、年間学校運営費が22億円減っている。そして、学校の施設の改築経費は441億円削減されている。また、学校が適正規模になることで教職員が358 人減り、人件費は年間32億円減っている。5校を1つの小学校にする、あるいは4校を小学校3校と中学校で、4校1つの小中一貫校にする。その場合、校長先生1人です。養護教諭1人です。事務職員1人です。プールの大きさも25m、一緒であります。講堂の大きさ、体育館の大きさも一緒であります。これが、いかに財政効果が大きいか」と語ったという※5。
 教育政策を財政効果と結びつけていること自体、いかがなものかと言わざるを得ない。さらに今日、京都市は統廃合してきた小学校の跡地利用について、「ホテルまたはブライダル」等の民間事業者を募集(元清水小学校)するなど、従来の姿勢と異なる方針を採り始めているのである。小学校版の公的施設の営利活用である。
 京都市は「【広報資料】学校跡地活用に係る事業者登録制度の創設について」で、「学校跡地の有効活用を進めるため、長期にわたり敷地を全面的に活用する事業を対象として、民間等事業者から広く提案を募集しております」と説明。添付された「活用対象となる学校跡地の概要」という一覧表に上京区の「元待賢小学校」跡地を候補にあげている。
 元待賢小学校跡地には、図表1にあるように、児童福祉センターの機構に組み込まれている発達障害者相談支援センター「かがやき」が入っている。
 「かがやき」は「発達障害(自閉症スペクトラム、注意欠如・多動性障害、 学習障害等)のある方とそのご家族が地域で安定して生活できるように支援するセンター」あれ、「相談支援」、「発達支援」、「就労支援」、「普及啓発・研修」の四つの機能を併せ持つセンターとして平成17 年11 月に開設され、総合的な支援を展開」している。
 現に稼働している公立福祉施設が入った学校跡地がなぜ、活用の対象になり得るのだろうか。さらに気になる動きがある。
 「かがやき」と児童福祉センターがある地域は、二条城に近接している。この二条城の駐車場の「再整備」に、京都市は着手するのだという。
 また、二条城前にあった京都国際ホテルの閉鎖跡地に、京都市は「阪急阪神ホールディングス(HD)に『国際観光都市にふさわしいホテルの誘致を切望する』と異例の要望書を出した」こともあったという。※6
 念のために申し添えると、「世界で最も魅力的な観光都市に選ばれ」た京都市※7が、観光客の誘致と、そのための二条城周辺の都市開発を進めており、その障壁となる児童福祉センターの除却をねらって合築方針を進めているのだと断言しているわけではない。なぜなら、常識的に考えて、観光地に福祉施設があることは、別に観光客誘致の障壁になるはずがないからである。
 ただし、京都市のこれまでの施策とその姿勢は、少なくとも結果的には、公的資源の成長戦略資源化を財政再建とセットで進めることを優先しているとみられるため、そのような推測すら抱かざるを得ない。

(2)児童福祉施策体系の変革
 次に、合築方針に絡んで、児童福祉施策体系の転換問題をみておきたい。
 同時に、ニーズの増大に供給が追い付いていない実情が児童福祉センターの現場にあることも直視しておきたい。

1)措置から契約へ
 まず、基本的な制度問題をおさらいする。
 障害福祉サービス提供の仕組みは、2000 年6月の社会福祉法改正(社会福祉事業法からの移行)以降、措置制度から「利用選択制度」=「個別利用契約制度」へと転換した。自治体による公的サービス保障の側面は薄れ(あるいは否定され)、サービス需給の主体(障害のある人)と事業者の契約に基づき給付されるよう、法体系の抜本改定がなされたのである。
 それに基づく制度は変遷を重ね、「支援費制度」から「障害者自立支援法」そして今日の「障害者総合支援法」へ至る。
 個別利用契約の導入は障害者福祉の分野に限ったものではなく、介護保険導入や近年の子育て新システムにも及んでいる。橋本政権が仕掛けた新自由主義改革としての、いわゆる「社会福祉基礎構造改革」から連綿とつながってきたものだ。
 確かにそれは、多様なサービス主体参入と一体的に取り組まれたため、現象としてはサービス提供主体の総量を大幅に増やした。一方で、対象者の掘り起こしが進むことになり、ニーズが増大した。これを利点とあげる識者・関係者も少なからずいる。しかし社会福祉基礎構造改革には致命的な問題があった。
 本来、社会保障とは、私たちが生まれながら持っている生存権保障を国家の手で実現するものに他ならない。人間の権利=人権は、私が私であること自体に最初から付随している。しかし、個別利用契約制度への転換は、その権利性を矮小化し、サービス利用契約に基づく権利(これは市場での物品購入と同程度の意味しかない権利である)へと書き換えられてしまったのである。
2)現在の制度利用と「京都方式」
①育ちの土台をつくる社会保障

 さて、障害者福祉改革は障害者自立支援法廃止運動(金ないモンから金とるな)から、骨格提言から障害者総合福祉法を目指す運動(私たち抜きに私たちのことを決めないで)と、壮絶な当事者運動と権力の巻き返しとのせめぎあいの中で、ジリジリと進行してきている。今日の制度の姿は、その今時点の到達となっている。
 国連子どもの権利条約にあるように、育ちや発達に弱さのある子どもたちや保護者が、専門家にアクセスし、「療育」をはじめ必要なサービスを受けることは、当然の権利として公的保障するのが全人類的ルールである。
 「私たちが考える療育のキーワードは、『小集団』『遊び』『自分のことを好きになる』です」「療育はこどものできないことをできるようにするところではありません」「大好きな大人やお友だちと遊びながら、自分に対する肯定的な感情を育て、誇らしい自分を見つけることは療育の大切な課題です」「乳幼児期につけた大人への信頼感・自分に対するゆるぎない自信は、学童期、青年期…と一生続く育ちの土台になります」※8。
 「育ちの土台をつくる」のが、子どもたちへの社会保障サービスであり、育ちに弱さがあるときには、必要なサポートを保障する。「療育」もそこに位置付けられる。
 現在の国の制度設計は、次のようなものである。
 まず、育ちに弱さがある子どもたちへのサポート事業の根拠法は、「障害者」の名を冠した法律ではなく、あくまで児童福祉法である。
 児童福祉法上、市町村が実施する障害児通所支援サービスは、 「児童発達支援」「医療児童発達支援」「放課後等デイサービス」「保育所等訪問支援」がある(図表3、4)。
 以上の通所支援事業を「利用」するためには、「障害児利用計画書」が必要であり、その作成を行うのが、「相談支援事業」(障害児通所支援の給付決定等について、障害児支援利用計画の作成、関係者との連絡調整、障害児通所支援の利用状況の検証、給付決定等に係る申請の勧奨等を行う※9)である。
 実はこの事業が2015 年4月1日から義務化されたことが、児童福祉センターの今後に影響を与える大きな要素の一つであり、そこへ合築方針がクロスしてきた。

②京都方式
 「相談支援事業」との関係で、あらためてみておかねばならないのが、「京都方式」(図表5)の存在である。
 先述のとおり、これまで京都市では相談に訪れた子どもに対し、例外なく児童福祉センター(第二児童福祉センターも含む)の発達相談支援部門(発達相談所)が、児童福祉司・保健師・児童心理司・言語聴覚士さらに診療部門の医師などの専門スタッフが相談を受け、発達検査・医学的診察を行い、サービス利用につなげてきた。これが「京都方式」である。
 もともと京都方式は、地方自治体が全ての子どもたちの発達保障へ公的責任を果たすことを体現した仕組みといえる。だが地域での相談支援事業設置の義務化は、悩む親御さんにとって一見すると、身近な場所で相談でき、サービスにまでつないでくれる事業所ができることを意味する。
 しかし、民間の相談支援事業が本格的に展開されることは、国の社会福祉基礎構造改革による利用契約方式が児童福祉分野でも本格的に実施されることを意味する。
 いわば、公的な関与は薄らぎ、保護者と事業者の契約に福祉が委ねられる※10。それは、福祉サービスの質保障も含めて、である。子どもたちの育ちの土台作りが、準市場化した世界へ委ねられてしまうことに危機感を抱く保護者は少なくない。
 京都方式の意義はその歯止めにある。構造改革の波からギリギリのところで公的責任を守っているのだ。京都市障害者自立支援協議会も、京都方式を守ることで合意している※11。
 しかし、京都方式の意義とは裏腹に、児童福祉センターの現場は困難な事態に直面しているという。相談件数の増加により、ニーズに応じたケースワークができない、相談待機・療育待機が増加している。療育手帳の判定数、受給者証発行数、児童相談所の虐待件数のいずれをとっても、年々増加している。職員は午前1時、2時までの勤務を余儀なくされている。そうした事態の中、子どもたちの新規相談や検査の待機期間は相当長い。「京都市3施設の合築方針を考える実行委員会」が15 年12 月5日に開催したフォーラム※12 では療育施設で働く専門職から次のようなエピソードが紹介された。「ちなみに私の勤務する事業所は、在籍児が75 人います。その子たちのほとんどが1歳半健診で何かしらの発達の遅れや偏りを指摘されていました。にもかかわらず、実際に療育につながったのは4歳を過ぎてからという子がほとんどです。つまり、発見から療育につながるまでの時間がかかりすぎているのです。この期間の保護者の不安は非常に大きいものがあります」制度改革とニーズ増大、その中で人員あるいは施設面の問題もあっって、機能不全に陥りつつある京都方式。その影響は子どもたちとその保護者に及んでいる。
 こうした新たな局面の中で、公的機関である児童福祉センターが今後どのような形で公的責任を果たすのかが問われていることは間違いない。
 だが、その解決は「合築」によってはかられるものではない。
 同フォーラムでまとめに立った京都府保険医協会の渡邉賢治副理事長は、次のように述べている。「今日のフォーラムで明らかになったのは、3施設を合築しても、それぞれが抱えている問題・課題を解決することはできないということです。今、雇用破壊、貧困の深まりといった、国の政策によって生み出された困難が、ひとたび家庭に降りかかれば生活自体が成り立たなくなります。こうした社会背景があって、児童福祉センターの必要性・存在意義は高まっています。一方で、児童福祉センターの機能は需要に追い付いていません。児童福祉センターの機能は、拡充する方向しかありません。縮小などは、絶対に考えられないはずです。今、子どもたちの発達を、文字どおりワンストップで支えている京都市児童福祉センターは、第3センター、第4センターと、京都市全域にその数を増やしていくしかないのではありませんか? それが私たちが運動を通じて求めるべき方向性だと考えます」。
3)合築で何が起こるのか
 合築に伴って京都市は児童福祉センターをどのようにするだろうか。
 児童福祉センターにある18 歳以上の市民を対象とした知的障害者更生相談所設置は必置義務である。
 虐待事例が増加の一途を辿る児童相談所についても、民間へ丸投げすることは出来ない。しかし、発達相談所や療育機能についてはどうだろうか。
 京都方式を維持するには、渡邉副理事長の指摘のとおり、センター自体の数を増やし、専門職の大幅増員という決断が必要となる可能性が高い。しかし、京都市はそもそも、国の制度改革の流れからはみ出している京都方式について、「今後一定の時期がくれば見直しを行う」と表明している※14。そもそも、ここまでに述べてきたように、京都市は可能な限り「民間でできることは民間で」を実行しつづけてきた。その政策が今後もとられるのであれば、京都市の発達相談所機能の根本的な「見直し」が起こる可能性は低くないのではないか。
 だからこそ、現場スタッフと民間の専門職たち、そして、子育てに悩む市民が共同して、京都市の公的責任を後退させない立場で、児童福祉センターの役割の再確認と、将来像の検討する時が今、訪れている。

6.人権保障こそが政策の基礎
 さて、本稿の締めくくりに、自治体施策と「医療」の問題について少し述べておきたい。12 月5日のフォーラムに小児科医から寄せられた声は、「児童福祉センターは拡充すべき」との声だった。「小児科開業医は日常診療において、発達遅滞・発達の偏り(自閉症スペクトラム・ADHD・LD)といった子どもたちと接する機会が少なくない。しかし、診断・療育を一般診療所が取り組むには大きな問題がある。実際には、ほとんど児童福祉センターに頼っている」「児童福祉センターは、全国でも数少ない診療所併設型の児童福祉センターであり、全国に誇るべきもの、日頃から、大変お世話になり、スタッフの方々の働きにいつも敬服している。それでも需要にはとても間に合っておらず、拡大・拡充はあっても、縮小するというのは現状認識の欠如という他ない」。
 もともと、地方自治体が取り組む福祉施策は、本来的に医療の存在なくしては成り立たない。だからこそ、自治体には医師をはじめとした医療職が採用され、専門性に基づいて公共サービスを担っている。
 しかし、医療職や福祉専門職の専門性とは、サービス提供に止まらず、自治体としての福祉・医療政策の策定においても、力を発揮するはずである。
 専門性は時として、自治体の行財政政策と対立関係になることがある。
 だからといって、専門職の意見を聞かず、施策決定を行っている自治体は必ず、間違うだろう。市民のためではなく、自治体経営自体を自己目的化したり、「富を生み出す」ことにまい進してしまったりしたとき、自治体は自治体でなくなってしまう。人権保障のために、自治体は何をすべきか。それこそが施策検討の基礎に据えるべき発想だろう。
 今、医療・介護制度が大きな転換期にある。国保の都道府県化や地域医療構想が展開される中、市町村自身が主体的に医療政策を考え、推進せねばならなくなってきている。
 しかし、京都市は相変わらず、国保で資格証明書を交付しており、2014 年3月段階で4664 世帯。短期保険証交付件数も12,806 世帯にのぼっている。滞納処分も差し押さえ件数が2005年の370 件から13 年には2,092 件で約7倍にのぼる。
 批判の強い学資保険の差し押さえ件数も2010 年度から一貫して実施している。子育て支援医療についても、さらなる拡充を求める声には届かないままだ。
 独立行政法人化した京都市立病院の院内保育所「青いとり保育園」では、何十年も子どもたちの育ちと
 医療従事者の生活と労働を支えてきた保育士が雇止めにされるという事態も起こっている。このような政策が続けば、京都市の公的な医療・福祉施策は焼け野原になる。
 制度の持続可能性や負担の公平、あるいは、市の財政再建が、人命よりも重いということは絶対にないはずだ。
 世界中の人が愛するという「風光明媚」な京都の町並みの陰で、人権が脅かされている。そんな京都でよいはずがない。
 京都市の今後の進路を、私たち医療者として注目しつづける必要がある。
(文責・政策部会)

【脚注】
※ 1 京都市ホームページで全文閲覧可能。意見募集は2015 年12 月24 日まで。
※ 2 特別の財源対策について、京都市は市税、地方交付税、国庫支出金等の通常の歳入では賄えない歳出に対し、行政改革推進債や公債償還基金等の借金で乗り切っていると説明。
※ 3 ここまでの安倍政権の地方創生戦略についての分析は、「「地方創生」と2015 年地方財政」
( 平岡和久著・『季刊自治と分権No59』)」による。
※ 4 ここでの分析は、「「地方創生」と2015 年地方財政」( 平岡和久著・『季刊自治と分権No59』)」を参照している。
※ 5 教育再生実行会議 第3 分科会 第6 回議事録 教育再生実行会議担当室( 2015 年5 月19日) より引用
※ 6 2015 年8 月2 日付・産経ネットニュースを参照。
※ 7 京都市ホームページによると、米国「Travel+Leisure」誌 読者投票で京都がベストシティランキング世界1 位に! なったという。
※ 8 『療育ってええな! 』( こどもたちの保育・療育をよくする会編著・かもがわ出版刊)
※ 9 「福なび・東京福祉なびげーしょん」ホームページの解説文より。
※ 10 京都市は保健福祉局・障害保健福祉推進室施設福祉課長名で障害児通所支援事業所施設長宛に発出した文書「児童発達支援に関する『京都方式』について」で、「国制度においては、児童福祉法に規定される障害児支援の利用希望者は、自治体による支給決定を受けたのち、保護者が、希望する児童発達支援事業所と契約したうえで利用することとされ、自治体の関与や利用事業所の制限はないものとされております。このため各事業所の『京都方式』への参加は、任意となります。」と書いている。その上で、事業所に対しては京都方式に参加するかしないかを問い、参加する事業所に対しては「京都方式の運用について」として、「児童発達支援の事業所に直接保護者から利用相談があった場合は、発達相談所に相談するよう伝えて下さい。( 発達相談所を介さない利用契約は行わないでください)」とした。
※ 11 「第10 回京都市障害者自立支援協議会報告資料」( 2014 年3 月14 日) の「障害のある児童への支援に関する専門部会について」では、「今年度は、平成24 年4 月の児童福祉法改正で創設され、平成26 年度末までの経過期間中に導入されることとされた保育所等訪問支援と障害児相談支援の両制度について、京都市独自の療育体系を損なうことのない制度導入の進めかたをテーマの中心として議論を行った」として、「今年度の検討結果と今後の課題」に、「両制度の実施に当たっては、京都市の独自体系『新京都市方式』を極力損なわない形で実施し、新規未就学児の事業所選定にあたっては発達相談所の関与を残していく」とまとめている。なお、「新」と「市」が付け加わっている理由は不明。
※ 12 「京都市3 施設合築方針を考えるフォーラムvol.2 何のため? 誰のための3 施設合築? 児童福祉センターは大丈夫? 」は20 15 年12 月5 日、京都市こどもみらい館で開催。
※ 13 ※ 10 の末尾、「その他」の項目に「『京都方式』については、療養待機の解消状況、相談支援事業所の充足状況等を踏まえて、今後一定の時期がくれば見直しを行うものと」すると明記している。

〈参考文献〉
・ 「際限のない公務の市場化は、自治体を巨大資本の儲け口に提供するためだけの場としかねません」( 城塚健之著・『住民と自治』自治体問題研究所 2014 年2 月号所収)
・ 「『地方創生』と2015 年地方財政」( 平岡和久著・『季刊自治と分権No59』所収)
・ 『いのちの権利は譲れない』( 障害者自立支援法に異議あり! 応益負担に反対する実行委員会編・かもがわブックレット192)
・ 『障害のある子どもの安心子育てブック 3 つのねがいをかなえよう』( 池添素著・全障研出版部刊)
・ 『改訂版 発達障害児のための支援制度ガイドブック』( 日本発達障害ネットワーク・唯学書房刊)

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