「多剤投与」への規制が中心
精神科京都精神科医会理事 東前 隆司
精神科における改定の流れは、外来精神医療の根幹であり診療所にとっては生命線でもある「通院・在宅精神療法」の点数を抑えてきたことであったが、過去3回の改定からは向精神薬の「多剤投与」への規制が中心となっている。まずベンゾジアゼピン系の抗不安薬や睡眠薬からはじまり、抗うつ薬、抗精神病薬へと規制が拡大した。「3種類以上の抗不安薬」「3種類以上の睡眠薬」「3種類以上の抗うつ薬」「3種類以上の抗精神病薬」が減算の対象となっているが、今回からは「同時に4種類以上の抗不安薬および睡眠薬」も加わったので注意を要する。また「多剤投与」については年4回、近畿厚生局にその多剤投与者数を届けなければならないという面倒な手続きが課されている。
今回の改定では初診時の「通院・在宅精神療法」において精神保健指定医であることが加算要件になることがなくなった。また「精神疾患とはICD-10の第5章・精神および行動の障害に該当する疾患または第6章に規定する「アルツハイマー病」「てんかん」および「睡眠障害」に該当する疾患をいう」として、これまで「通院・在宅精神療法」の対象とは認めていなかったアルツハイマー型認知症やてんかん等でも認められることになった。自閉症スペクトラム障害や発達障害については初診が20歳未満であるという制限がなくなった。「睡眠障害」は通院精神療法を算定するに相当する下位分類の病名記載をお願いしたい。
検査では、従来は診察料に含まれていた長谷川式簡易知能評価スケールが点数化された。
また精神科以外の診療科での「不安、不眠の症状を有する患者に1年以上継続したベンゾジアゼピン受容体作動薬の投与」には精神科医の助言を得ている場合など一定の条件が課されることとなった。これは、日医生涯教育制度のカリキュラムコード69「不安」、または20「不眠」(eラーニングを含む)を満たす研修を受けることでクリアされる。
今回の診療報酬改定とは関係がないが、最近、保険者から強気の返戻が多くなっているのは事実である。病名と適応する治療内容であることに注意されたい。精神科入院における診療報酬改定は細かいところでの変更はあっても大勢にそれほどの変化はないと伺ったので割愛させていただく。(完)