難病法重症度分類は容認し難い 政策部会理事 吉中 丈志  PDF

 先日、拡張型心筋症で治療中の患者さんが受診に来られ、継続申請の書類への記載を依頼された。昨年にも記載した書類だったので聞いてみると毎年必要になったのだという。20ページほどの調査票に臨床所見、検査データ、投薬内容を記載する必要がある。家族歴のように毎年必要とは思えない項目もある。患者さんによれば同じ病気で認められなくなった友人もいるとのことだった。拡張型心筋症は従前から難病に指定されており、この患者さんは20年近くの病歴がある。幸い心不全はコントロールでき、不整脈はあるが致死的ではない。
 上記の変化は、2014年5月に成立した難病新法の経過措置が終了したためだ。難病法は難病の枠を331疾病に広げたが、軽症患者さんを難病指定から外すことや患者さんの自己負担を増やす制度に変わった。安倍内閣が強行した社会保障制度改革プログラム法の定めによる。社会保障制度の権利性の否定が、難病法に持ち込まれたといってよい。
 難病法では、以前から難病指定されていた患者さんは経過措置として難病指定を認められていた。この経過措置は昨年12月末日で終了となり、以後は難病の判定基準に疾病の重症度が組み込まれた。軽症であれば認めないというのである。しかし、この軽症者外しには医学的根拠がない。難病と言われる通り原因が不明、あるいは病態の解明が不十分な疾患で、したがって治療法が未確立のものも多く、予後を見通すことが難しいものも少なくない。
 こうしたこともあって、重症度は病期や治療によって変化するし、その幅も大きい場合が多い。それ故に患者さんの生活困難や不安は大きい。こうした臨床上の課題を解決するために「難病の医療に関する調査および研究の促進」が掲げられているのである。20ページに及ぶような詳細な申請書を求めているのもそのためではないか。軽症であるという理由で難病指定から外せば難病自体の推移そのものが把握できなくなる恐れが大きい。こうした理由で、医学的な観点からも難病法の内容には容認できない部分が少なくない。
 同時に、継続申請書類の量が膨大になっており、解決を求められている医師の過重労働に新たな負担を持ち込むものとなっていることも指摘しておきたい。社会保障制度という面でも難病研究という面でも瑕疵があるにもかかわらず、十分な対価なく押し付けられているこのような負担は早急に解決されるべきである。
 法制度の施行5年目の見直しにあたっては上記のような問題の解決を図るべきである。

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