協会は、5月20日に文化講座・ミニ料理教室を開催。講義スタイルで懐石近又の七代目当主である鵜飼治二氏に、季節の懐石料理の実演を交えて和食について話していただいた。参加者は18人。
「和食の原点と食育の大切さ」を考える
坂本 誠(右京)
京都の街中でも賑やかな四条通りと京の台所の錦小路に挟まれた一画にひっそりとたたずむ懐石・宿「近又」で「和食の原点と食育の大切さ」について七代目当主、鵜飼治二氏より講演を拝聴しました。「近又」は、創業が江戸時代享和元年で二百年もの歴史を持っており、建屋は周囲が変化していく中、しっかりと京町家の伝統を守り、手入れされた庭があり「国の登録有形文化財」に指摘されており、和食という日本の文化にしっかりと馴染んでいました。
最初の1時間程は和食についての講演があり、それからは巧みな手さばきと「和食」と「食育の大切さ」についての興味深いお話を聞きながら、料理作りの実演となりました。当主が、和食の原点で重要と考えておられる「だし」を作りながらの試飲があり、多種類の包丁の説明や細工切りを見せていただき、料理の試食を交えての文化講座でした。
和食が「無形文化遺産」になったことに対して、日本人が農耕民族であり、四季折々の自然の美しさと移ろいに対する敬愛や感謝する心を持っており、地域に根差した多様な食材を自然からの恵みとして大切にして来た歴史を思い、「和食」を日本の伝統文化として理解していただきたいとの話がありました。
日本民族は、海のもの、山のもの、豊かな水などから「旨み」を発見してきた歴史がある。この「旨み」は、日本の自然、四季の移ろい、生活史に深く関わっているもので、和食で重要な「だし」も昆布、カツオ、いりこ、椎茸をうまく取り入れて調理技術や方法を発展させて育んできたものであると。昆布についても、北海道が主産地であるが、利尻、羅臼、道南などその地方の海流、海水温が異なり、違った風味となるため料理の「旨み」も異なっているとのことでした。
また、和食には四つの五として、五味(甘・辛・酢・苦・旨)、五感(聴・見・触・味・嗅)、五色(青・赤・黄・白・黒)、五法(焼・煮・揚・蒸・生)の概念があり、それに基づき調理の盛り付けや器選びにも工夫がなされているとのことでした。
そして、「食育」とは食事の楽しさや大切さを学ぶことにより、心の通った家族そして人間関係の絆を作ることが目的ではないかと話をされました。
和食の文化には日本人の自然観・宗教観が表現されており、その根底にある日本人が持つ伝統的な美意識と、古来より根付いてきた日本の文化の深さ、豊かさ、広さ、大きさ、また厳しさなどの背景について改めて考えさせられる文化講座でした。