「終活」 の問題について
対象者=代議員89人、回答数=42(回答率47%)
調査期間=2018年5月23日~6月8日
自治体は 「生きる」 保障を行うべき
京都市は2017年4月、「終活~人生の終末期に向けての備え~」リーフ3万部を印刷し、区役所などで配布した。リーフは「あなたがもしものとき、どのような医療を受けたいですか」「人工呼吸器や人工栄養法による延命治療を希望しますか」と問いかけ、「もし、延命治療についてどう考えるかを、元気なうちに考え、ご家族や親しい人と話しあって、ある程度の方向性を決めておくことができれば、あなた自身の安心とご家族の負担の軽減につながります」として、京都市が作成した「事前指示書」も添付している。これに対し協会は5月30日、「京都市は『終活』リーフの撤回・回収を」求める声明を発表し、市当局へ送付するとともに、広くマスコミへ送付した。声明は、▼人の生死の選択にかかる書類を医療者の介在なく「公権力」である京都市が配布することへの違和感▼医師は自らが介在しない時点で記された「事前指示書」が、患者の家族から持ち込まれたとき、一体どのように扱えば良いのか▼国が医療費抑制を進める状況下で利用される懸念▼市民の心を傷めつける恐れがあり、自治体は死ではなく生きる保障を行うべき―などを指摘した。難病患者や障害のある人たち、法曹関係者からも京都市に批判と懸念が寄せられている。
国は終末期医療という言葉を「人生の最終段階における医療」という言葉に置き換え、その在り方を国民一人ひとりに考えさせる取り組みを進めることを自治体に求めており、京都市の動きはこれを先取りしたもの。この3月には「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」が改訂された。ガイドラインは「本人が医療・ケアチームと十分な話し合いを行い、本人による意思決定を基本としたうえで、人生の最終段階における医療・ケアを進めることが最も重要」とし、治療内容や療養の場所などを繰り返し話し合い、文書に残すこととした。また、「アドバンス・ケア・プランニング(ACP、患者の意思決定支援計画)」と呼ばれる取り組みを盛り込んでいる。それを踏まえた対応を要件とする点数改定も行われた。(例:在宅患者訪問診療料の在宅ターミナルケア加算においては、ガイドラインを踏まえ、「患者本人及びその家族等と話し合いを行い、患者本人の意思決定を基本に、他の関係者との連携の上対応すること」とされた)
半数が自治体の啓発は「不適切」
自治体が「終活」を普及啓発することについては、半数超が「適切でない」とし、「適切」は1割にとどまった(図1)。
「強要されることでない」が76%
人生の最終段階における医療についてどう考えるかを複数回答できいたところ、「日頃から考えておくのはよいが、強要されることではない」が76%で最も多く、「意思決定はその都度行われるもので健康時のものが優先されるべきでない」64%、「医療費抑制の観点で左右されるべきものではない」60%と続く。「あくまで本人と医療者との話し合いで決めるべき」は48%であったが、「その他」は家族も含めた3者で話し合うべきとの意見をあげており、これも合わせると53%となる(図2)。
診療報酬の要件化は9割が反対
ガイドラインが診療報酬の要件とされることについて、「ガイドラインはあった方がいいが診療報酬の要件とすべきでない」が69%、「医療内容を制限しかねないので評価しない」が24%と、93%が反対している。これに対し、「評価する」は5%にとどまった。「その他」では、「診療報酬の要件としないと動かない医師がいることが問題と思う」との意見があった(図3)。
図1 自治体による「終活」の普及啓発
図2 人生の最終段階における医療についてどう考えるか
図3 ガイドラインが診療報酬の要件とされること