九条医療人の会 総会・講演会  PDF

国民投票での意思表示訴え
田崎記者が安倍改憲の問題を解説

 「九条の会アピール」を支持する京都医療人の会は第10回定期総会を5月20日に開催。「憲法の岐路―安倍改憲の表層と深層―」をテーマに、神奈川新聞記者の田崎基氏の公開講演会を行った。田崎氏は、2014年7月の集団的自衛権行使容認の閣議決定後に神奈川新聞が始めた「時代の正体」という論説企画を担当し、憲法学者や日本会議などへの取材経験をもとに講演活動を行っている。

 田崎氏は、「憲法の最もすぐれた特徴はその立憲的意味にある。それは国家権力を制限して国民の権利・自由を守ることを目的とする憲法である」との憲法学の大家、芦部信喜氏によることばを示し、国家権力への制限を緩める方向で変えたいと言っているのは、「犯罪者が刑法を改正しろと言っているようなもの」(憲法学者・木村草太氏)、「ライオンが檻を破壊しようとしている」(楾大樹弁護士)との言を紹介。
 安倍首相の改憲項目は、▽自衛隊明記▽教育の無償化・充実強化▽緊急事態条項▽参議院の合区解消―の四つ。自民党憲法改正推進本部が3月に出した自衛隊明記案は1項2項を残した上で、「9条の2」を設けるとしている。この案は「必要最小限度の実力組織」ではなく、「必要な自衛の措置をとることを妨げず」としており、憲法上の縛りが破壊されて歯止めを失っていく危険がある。さらに、「自衛隊」に関して内閣総理大臣を指揮監督者とする以外の中身が書かれておらず、しかも「法律の定めるところにより」として憲法で抑制していないこと。「国会の承認その他の統制に服する」となっており、「及び」ではないため国会承認が必須でないこと、などの問題を指摘した。
 緊急事態条項についても、諸外国では緊急時に超法規的措置を取りがちな国家権力を事前に縛っておくことに要諦があるが、自民党案は真逆であり、いかにして政府の権限を強化するかになっていることから、最大の警戒が必要だとした。
 参院の合区問題は本来、基本的人権と代表民主制が問われる問題であるのに、与党議員の議席を守るために合区を解消しようという政策だと批判。高等教育の無償化についてはすでにトーンダウンしており、「充実強化」をあえて憲法でいう必要性はまったくないとした。
 国民投票法によれば、憲法改正の発議から60日以降180日以内で国民投票を行うこととされており、安倍首相の明言した2020年施行であれば1年以内に国民投票が行われる可能性がある。発議は国会内の議論であり、私たちに止める手立てはない。私たちにできることは、その内容を勉強し、一人ひとりが手の届く範囲で声掛けをして、国民投票で意思表示していくことだと訴えた。
 講演後の総会では、京都協会で集約した改憲に反対する署名413筆を5月末に保団連を通じて国会に提出することを報告。医療関係の団体で大きな動きをつくっていきたいと提起した。

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